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神様は、明日を知らない』 ――全知全能の神が、人間になった理由――

作者:亀
最新エピソード掲載日:2026/10/18
『神様は、明日を知らない』

世界のすべてを知り、あらゆるものを思い通りにできる、全知全能の神・アポロン。

彼にとって、人間の感情も、争いも、愛も、悲しみも、すべては理解できる「現象」に過ぎなかった。

けれどある日、アポロンは一つの疑問を抱く。

――人間として生きるとは、いったいどんなものなのだろう。

神として何もかも知っているからこそ、彼には「分からない」という経験がなかった。空腹も、寒さも、疲労も、誰かを待つ時間も、明日を知らない不安も。

そしてアポロンは、自ら神の座を離れ、人間として生きることを選ぶ。

街を歩き、働き、人と出会い、食事をし、笑い、傷つき、誰かを大切にする。

その日々の中で、彼は初めて気づいていく。

人間は弱い。愚かでもある。けれど、だからこそ一瞬一瞬を大切にして生きている。

しかし、神が人間になったことで、世界の秩序は少しずつ崩れ始めていた。

アポロンの願いを叶えたのは、彼を最も忠実に慕う神の従者だった。

世界を救うため、従者と人々は一度人間となったアポロンを、再び神へと戻そうとする。

そして神となったアポロンは、最後に一つの決断をする。

自らの力をすべて世界へ還すこと。

それは、神として世界を支配するためではない。

かつて人間として生きた彼が、大切に思うようになった人々を救い、彼ら自身の未来を返すためだった。

全知全能だった神は、最後にすべてを手放す。

そして世界から、神は消える。

残された人々が生きていく世界には、もう神の声は届かない。

ただ一つだけ。

神は、人間になったことで初めて知った。

――明日が分からないからこそ、人は明日を楽しみにできるのだと。
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