三歳の娘を探して異世界へ渡った。俺を見つけたのは、水を出す魔法を覚えた八歳の娘だった
最新エピソード掲載日:2026/10/11
三歳の娘が、家から消えた。事件でも事故でもない。文字どおり、消えた。
数ヶ月後、俺と妻はあの子が渡った先にたどり着いた。異世界だった。
こちらの数ヶ月が、あちらの五年にあたることは、誰も教えてくれなかった。
俺が探していたのは、三歳の娘だ。村のどこにもいない。
見つけたのは、娘のほうだった。
「……おとうさん?」
八歳になっていた。
持ってきた上着は、あの子の腕の半分にも届かなかった。
帰り道は無い。ならば、ここで暮らしを立て直すだけだ。
娘が見せてくれたのは、戦うための魔法ではなかった。
水を出し、火を熾し、傷んだものを保つ。暮らしを少しだけ良くする、地味な魔法だ。
失った五年は戻らない。だから、これからの一日は一つも渡さない。
やがて世界が、娘の力を欲しがる日が来る。そのときは、俺が前に立つ。
数ヶ月後、俺と妻はあの子が渡った先にたどり着いた。異世界だった。
こちらの数ヶ月が、あちらの五年にあたることは、誰も教えてくれなかった。
俺が探していたのは、三歳の娘だ。村のどこにもいない。
見つけたのは、娘のほうだった。
「……おとうさん?」
八歳になっていた。
持ってきた上着は、あの子の腕の半分にも届かなかった。
帰り道は無い。ならば、ここで暮らしを立て直すだけだ。
娘が見せてくれたのは、戦うための魔法ではなかった。
水を出し、火を熾し、傷んだものを保つ。暮らしを少しだけ良くする、地味な魔法だ。
失った五年は戻らない。だから、これからの一日は一つも渡さない。
やがて世界が、娘の力を欲しがる日が来る。そのときは、俺が前に立つ。
第一章 晩春、再会
三歳で消えた娘は、八歳になっていた
2026/08/13 21:10
おとうさんとおかあさんは、わたしに気づかなかった
2026/08/13 21:10
俺は五年分の礼を言うつもりだった
2026/08/13 21:10
第二章 夏、二軒目の家
俺は娘の家の隣に、家を建てはじめた
2026/08/13 21:10
娘がいなくなった日、積み木だけが残っていた
2026/08/13 21:10
おうちが二つになっても、わたしのやることは同じだった
2026/08/13 21:10
俺たちが読んだ紙には、戻れないとだけ書いてあった
2026/08/13 21:10
俺の段取りは正しくて、それでも誰も動かなかった
2026/08/13 21:10
わたしは、井戸の水が減っていることを知らなかった
2026/08/13 21:10
娘は、桶が二十並んでも手を下ろさなかった
2026/08/13 21:10
みんながわたしを見るので、なにか悪いことをしたのかと思った
2026/08/13 21:10
文乃が正しかったことを、俺はここで初めて見た
2026/08/13 21:10
第三章 秋、村が頼る
雨の夜、村がはじめて娘を頼りに来た
2026/08/14 21:10
わたしの仕事が、村のぶんまで増えた
2026/08/15 21:10
(改)
俺の水の道は、ヨナスの順で生き返った
2026/08/16 21:10
サナが帰ってきた夜、ただいまがふたつになった
2026/08/17 21:10
村じゅうが、文乃の紙を頼りはじめた
2026/08/18 21:10
おかあさんが、わたしの名前の話をした
2026/08/19 21:10
祭の夜、娘の「うち」がひとつ増えた
2026/08/20 21:10
よそから来た男は、娘の水を知りたがった
2026/08/21 21:10
第四章 冬、越えるまで
冬が来た。娘の水は足りて、薪だけが足りない
2026/08/22 21:10
わたしの冬は、火のしごとから始まる
2026/08/23 21:10
ヨナスの隣で、俺はあの日のことを言った
2026/08/24 21:10
わたしのたのまれごとが、雪でいっぱいになった
2026/08/25 21:10
蓄えを出す日、俺は行けない家を二軒残した
2026/08/26 21:10
大雪の三日、わたしはこっちの家で寝た
2026/08/27 21:10
最後の火をつけたのは、俺の世界の道具だった
2026/08/28 21:10
サナが帰ってきて、わたしは全部しゃべった
2026/08/29 21:10
雪がゆるんだ日、わたしは塾の話を聞いた
2026/08/30 21:10
春の入口で、俺はやっと前の世界の話をした
2026/08/31 21:10
第五章 春、塾に通う
塾の一日と、はじめて書いたわたしのなまえ
2026/09/01 21:10
俺は今年、冬の薪を春のうちに頼んだ
2026/09/02 21:10
おかあさんの紙は、まえとうしろで字がちがった
2026/09/03 21:10
アドラー家の使いが、娘を学園へと言った
2026/09/04 21:10
娘に訊く前に、俺は三つの条件を取った
2026/09/05 21:10
わたしが行くりゆうは、ふたつあった
2026/09/06 21:10
第六章 夏、学園へ発つ
くらべるための板を、先生がわたしにくれた
2026/09/07 21:10
娘は馬車で四日か五日。俺は二軒ぶんの水と鶏三羽
2026/09/08 21:10
道は、わたしの村で終わっていなかった
2026/09/09 21:10
門から戸のところまで、わたしは八十二歩あるいた
2026/09/10 21:10
ここの字は塾とおなじで、水はわたしの仕事じゃなかった
2026/09/11 21:10
実技試験の日にわたしは何も言わずに水を出した
2026/09/12 21:10
取り入れのあいだも、娘の鶏は俺が入れた
2026/09/13 21:10
わたしは、はじめての手紙にかぞえていることを書いた
2026/09/14 21:10
第七章 秋、帰る日を数える
わたしがもらったのは、いちばん小さいことば
2026/09/15 21:10
「わからないことは、よっつになった」と、娘の紙にあった
2026/09/16 21:10
冬の水を溜める日、わたしは三回おなじことを言った
2026/09/17 21:10
わたしは毎日、なんのことばを言っているんだろう
2026/09/18 21:10
俺は棒をもう一本こしらえ、娘の帰る日を数えた
2026/09/19 21:10
わたしの通る道から、知らない道が三つ出ていた
2026/09/20 21:10
うちの水は、いまはおとうさんが汲んでいる
2026/09/21 21:10
鉋で落とした三行と、俺の板に残った二行
2026/09/22 21:10
第八章 冬、訊ねが続く
知らない子がわたしのいきの入れかたを言っていた
2026/09/23 21:10
娘に何ができるかを、主家は答えなかった
2026/09/24 21:10
きょうからわたしは奥のへやで水を出すことになった
2026/09/25 21:10
娘を五年育てた人が、初雪の日に文乃の前に立った
2026/09/26 21:10
わたしにどうやってかを訊いて、紙に書いた人
2026/09/27 21:10
名を出さない相手が、娘に会いたいと言ってきた
2026/09/28 21:10
六つ目の字がよめた日に、わたしは廊下でおしえた
2026/09/29 21:10
俺が断ったのは、名を知らない相手だった
2026/09/30 21:10
第九章 早春、道をえらぶ
いつからできるのかと訊かれてわたしは答えた
2026/10/01 21:10
断りの返事は来ないまま、娘の帰る日だけが来た
2026/10/02 21:10
つぎで五つ目だと言われて、わたしは荷をつくった
2026/10/03 21:10
わたしの椀が先で、おかあさんのは、そのまま
2026/10/04 21:10
学園をつづけたいか。俺は娘に先に訊いた
2026/10/05 21:10
戻らないと伝えた日に、俺が取った四つ目の条件
2026/10/06 21:10
ゾフィー先生は、つづきからできますとわたしに言った
2026/10/07 21:10
俺はどうして、鍬を持ったまま坂のほうを向いたのか
2026/10/08 21:10
第十章 春、もう一度まく
まく順を、わたしの手はおぼえていなかった
2026/10/09 21:10
村は娘へ、何も訊かずに種を渡した
2026/10/10 21:10
いたの続きは、サナのうちで書くことにした
2026/10/11 21:10