君が奏でる部屋

　ある夢の実現のためにコンクールでグランプリを獲得した、音楽大学ピアノ演奏科に在学中の僕と彼女の物語。

　これは、君に伝えたくて残している。

　幼なじみで、ピアノの生徒だった彼女の本心は長い間知らなかった。聞きたくても聞けない、伝えたくても伝えられなかった頃の想い出。友人にも内緒にしていたけれど、僕は、彼女が産まれた時から、ずっと彼女のことが好きだった。彼女に初めて歌った曲、聴かせた曲……。そして、成長した彼女はコンクールに出場し、望外の結果となった。
　やがて僕達は、先生と生徒ではなく恋人としての関係を構築していく。彼女はおとなしくても人形ではない。家族や友人との関わりを通して、人間として音楽家として成長していく。果てしない芸術を追究する幸せと苦悩。今まで以上に、彼女と音楽に向き合っていく日々。
　夢を叶えた僕は、彼女の夢を叶えることにした。彼女の夢とは、僕の想像していないことだった。

　君に出会う前からの、僕たちのあの頃の日常を綴ってある。



　

　アルファポリスにも掲載しております。