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君が奏でる部屋  作者: 槇 慎一


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19婚約



 12月になった。

 僕は単位の心配はなくなったが、卒業試験と結婚式の打ち合わせと結婚生活の準備で忙しくなった。


 両家の両親と僕とかおりの六人で、写真館で記念撮影をして、会食をした。父親同士は同じ会社だし、母親同士は幼稚部から高等部まで同窓生だ。今日はかおりのお母さんも来ている。滅多に外に出なくて生活感もなく、年齢がわからないくらいに若い。かおりはお母さんにとても似ていて、綺麗だった。


 会食したのは、いつも僕が演奏しているフレンチレストランだ。かおりは婚約指輪をつけていたのだが、僕の母親が目敏く見つけて声をかけた。


「かおりちゃん、素敵な指輪じゃない! これ、慎一が?」

「はい」


「慎一、あなたよくそんなに持ってたわね」

「お母さん、かおりの前でやめてください」


「あ、もしかしてコンクールの賞金? 確かあれは部門1位の賞金100万と、全部門グランプリの賞金が100万だったかしら? いつの間にか200万も持ってたのね?」

「それ以前に、ここでBGMや演奏のバイトもしています」


「やるわね! 今日も何か弾くつもりなの?」

「今日は弾きません」


「……ってことは、かおりちゃんも賞金があって、お金持ちね! 藤原さん、かおりちゃん素晴らしいですわ!」

「なんだ、かおりはお金持ちなのか! すごいなー!」


 テンションが高い人と静かな人の差が激しい。今日は今後のことなど報告したりしなければならない。結婚してからは自分たちでやっていきたいが、結婚式は完全に親の世話になる。きちんとお願いしたい。


 僕の母親が、張り切っている。

「かおりちゃんはこれから大学生ですものね。それで慎一が藤原になるのね? 新居が教授と同じ、音大の教員住宅と。あんな便利な所でピアノが弾けて安く住めるなんて、よかったわね。慎一の大学にも近いし、かおりちゃんの学校、大学だけキャンパスが向こうにあるから近くなるわね。よかったわね」

「はい」

 かおりはにこにこしている。



 僕も、かおりのお父さんに安心してもらえるよう、時々かおりの顔を見て確認するように話した。


 かおりは女子大に籍を置きながら、音大附属教室の特待生として内定をもらっていること。


 教授に教わっていたし、史上最年少でのグランプリで名誉なことだから、このまま勉強を続けていれば、おそらく登録更新されること。


 大学で教授のレッスンも堂々と受けられるし、大学の公式行事や演奏会にも参加資格があること。


 かおりの大学の勉強と合わせて、今までのようにピアノと両立していくのは忙しいと思うけど、家事などは一緒にやろう。


 大学が指定するコンクールで一位という肩書きがあるので、卒業後は僕と同じで、かおりが望めば大学の講師と音楽教室の講師になれること。


 僕と連弾や2台ピアノのデュオを組んで、ピアニストとして演奏活動をしたり、大学でデュオのクラスや室内楽の講座を作ることも考えていること。


 かおりは若いし、一緒に海外の大学院に行くことなど、今後また考えていきたい。



「いかがでしょうか……」

「異義なし!」 

 かおりのお父さんだ。


「うん、楽しみだな。頑張りなさい。結婚式は我々も招待したいお客様がそれなりにあるから、任せてもらおう。3月末でいいかな」

 僕の父親も応援してくれた。


「ありがとうございます。よろしくお願いします。後は、かおりはオーケストラとのコンチェルト共演コンサートと、3月頭にソロリサイタルがありますので、応援よろしくお願い致します」


 両家の両親から拍手をもらった。


 昔から知っている親同士のつながりではあるが、新たな絆が生まれるようで、僕は嬉しかった。











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