潮霧高校物語
最終エピソード掲載日:2026/10/28
海の見える潮霧高校に通う文芸部員 桜田孝介は小説は書けるのに、人の心が読めない。隣の席のクラスメイト 桃山さくらは、地元の劇団「汐鳴座」で演技の道を歩む研究生。彼女は三年間の片思いを、完璧な演技力で隠していた。
四月、通学路の防波堤で孝介が耳にした「好きです」。それは台本の練習だった。文化祭の朗読劇『潮鳴りのわすれもの』の脚本を孝介が任され、なりゆきでさくらが演出助手に立ったことから、二人の距離は少しずつ動き始める。台本の中の言葉はすんなり届くのに、日常の言葉はいつもすれ違う。孝介は「告白の練習」さえ、練習だと思っている。消しゴムを三回落とし、台本の余白に書き殴られた言葉に気づかず、机に並ぶ感想ノートの筆跡を、最後まで本人と知らない。
夏、浴衣の花火大会で言いかけた本心は突発的な花火の音に消える。秋、文化祭当日、さくらは劇団の本番への道を捨てて朗読劇を選ぶのに、孝介は「劇団に行け」と背中を押してしまい、彼女は初めて感情をあらわにして走り去る。冬、さくらの声は出なくなる。心因性。二人きりにされたクリスマスの夜、声を失った彼女との会話はメモ帳の筆談だけで成り立った。孝介がポケットから出したのは「好きだ」の一言だけが書かれた脚本の殴り書き。さくらはそれを台本の余白に貼り、何も書き添えなかった。
春。研究生公演『潮鳴りのわすれもの 改』の舞台上で、さくらは客席に背を向けたまま、台本にない一言を口にする。「孝介くん」。一年分の伏線が一斉に回収され、孝介は初めて台本の外側に出る。「ボクが好きなのは役じゃない。桃山さくらだ」。けれど返事はその場では出ない。「返事、まだしてないから」。
そして翌年四月。防波堤に、台本を持たない彼女が立つ。返事は海の音に混ざり、孝介は生まれて初めて、聞き返すことができた。
台本なら何でも書ける男と、台本でしか本心を言えない女が、台本を介してしか近づけず、最後に台本を捨てるまでの、一年の物語。
四月、通学路の防波堤で孝介が耳にした「好きです」。それは台本の練習だった。文化祭の朗読劇『潮鳴りのわすれもの』の脚本を孝介が任され、なりゆきでさくらが演出助手に立ったことから、二人の距離は少しずつ動き始める。台本の中の言葉はすんなり届くのに、日常の言葉はいつもすれ違う。孝介は「告白の練習」さえ、練習だと思っている。消しゴムを三回落とし、台本の余白に書き殴られた言葉に気づかず、机に並ぶ感想ノートの筆跡を、最後まで本人と知らない。
夏、浴衣の花火大会で言いかけた本心は突発的な花火の音に消える。秋、文化祭当日、さくらは劇団の本番への道を捨てて朗読劇を選ぶのに、孝介は「劇団に行け」と背中を押してしまい、彼女は初めて感情をあらわにして走り去る。冬、さくらの声は出なくなる。心因性。二人きりにされたクリスマスの夜、声を失った彼女との会話はメモ帳の筆談だけで成り立った。孝介がポケットから出したのは「好きだ」の一言だけが書かれた脚本の殴り書き。さくらはそれを台本の余白に貼り、何も書き添えなかった。
春。研究生公演『潮鳴りのわすれもの 改』の舞台上で、さくらは客席に背を向けたまま、台本にない一言を口にする。「孝介くん」。一年分の伏線が一斉に回収され、孝介は初めて台本の外側に出る。「ボクが好きなのは役じゃない。桃山さくらだ」。けれど返事はその場では出ない。「返事、まだしてないから」。
そして翌年四月。防波堤に、台本を持たない彼女が立つ。返事は海の音に混ざり、孝介は生まれて初めて、聞き返すことができた。
台本なら何でも書ける男と、台本でしか本心を言えない女が、台本を介してしか近づけず、最後に台本を捨てるまでの、一年の物語。
四月
プロローグ
2026/10/13 08:43
(改)
第一話
2026/10/13 12:08
(改)
第二話
2026/10/13 18:24
(改)
第三話
2026/10/13 19:14
(改)
第四話
2026/10/13 19:48
(改)
五月
第一話
2026/10/13 20:04
(改)
第二話
2026/10/14 06:08
(改)
第三話
2026/10/14 12:30
(改)
六月
第一話
2026/10/14 18:56
(改)
第二話
2026/10/14 20:00
(改)
第三話
2026/10/15 08:42
(改)
第四話
2026/10/15 12:13
(改)
七月
第一話
2026/10/15 20:00
(改)
第二話
2026/10/16 06:24
(改)
第三話
2026/10/16 07:52
(改)
八月
第一話
2026/10/16 08:27
(改)
第二話
2026/10/16 18:25
(改)
第三話
2026/10/16 19:17
(改)
第四話
2026/10/16 20:12
(改)
第五話
2026/10/17 06:01
(改)
九月
第一話
2026/10/17 07:37
(改)
第二話
2026/10/17 08:21
(改)
第三話
2026/10/17 09:36
(改)
十月
第一話
2026/10/17 12:59
(改)
第二話
2026/10/18 19:20
(改)
第三話
2026/10/19 08:23
(改)
第四話
2026/10/19 12:49
(改)
十一月
第一話
2026/10/19 17:25
(改)
第二話
2026/10/20 07:07
(改)
第三話
2026/10/20 08:24
(改)
第四話
2026/10/20 18:26
(改)
第五話
2026/10/20 19:34
(改)
十二月
第一話
2026/10/20 22:17
(改)
第二話
2026/10/21 08:34
(改)
第三話
2026/10/21 09:53
(改)
第四話
2026/10/21 12:55
(改)
第五話
2026/10/21 17:09
(改)
一月
第一話
2026/10/21 18:51
(改)
第二話
2026/10/21 19:45
(改)
第三話
2026/10/21 21:14
(改)
第四話
2026/10/22 07:31
(改)
第五話
2026/10/22 08:06
(改)
二月
第一話
2026/10/22 12:29
(改)
第二話
2026/10/22 19:23
(改)
第三話
2026/10/22 21:03
(改)
第四話
2026/10/23 06:18
(改)
第五話
2026/10/24 08:50
(改)
三月
第一話
2026/10/24 20:10
第二話
2026/10/25 07:10
第三話
2026/10/25 08:10
エピローグ
2026/10/28 19:29