天目の残響 ~狐火と耀盌の修羅譚~
最新エピソード掲載日:2026/08/25
歴史に名を残さなかった二人の少女。彼女たちは、異なる時代に同じ“眼”を開いた。
――応永年間、京。
陰陽師・賀茂定棟の妹、賀茂静は、女であることを理由に陰陽寮へ入れず、兄の屋敷で暦を書き写す日々を送っていた。
ある日、御所から一匹の白狐が逃げ出す。
それを境に、昨日とは内容の違う公文書、月明かりと逆向きに伸びる影、存在していたはずの人間を誰も思い出せなくなる怪異が、都を静かに侵食していく。
事件はやがて、陰陽師が狐を使って帝を呪ったという「狐使役呪詛」として処理されようとする。だが静には見えていた。
狐は誰かを呪っているのではない。もっと恐ろしい何かから逃げているのだ。
幼い頃にもらった赤い紐の腕輪と、そこに結ばれた小さな珠。価値のない飾りにしか見えなかったそれは、静に“この世界から外れた道”を見せ始める。
そして時は流れ、昭和十九年。
戦争の終わりが見えない日本で、水城律は出口王仁三郎のもとに身を寄せていた。
律が持つ古い耀盌の水面には、ときおり、まだ起きていない出来事が映る。
しかし、それは未来を言い当てる予言ではない。
空襲を逃れる町。別の場所で炎に包まれる人々。助けた一人が原因となって、さらに多くの命が失われる可能性。
見えるのは、選ばれなかった未来の断片だけ。
軍も、役人も、信奉者たちも、その力を自分たちのために利用しようとする。一方、律の周囲では、記録の改竄、存在しない命令書、他人の顔をした追跡者が現れ始める。
静が遺した狐火。律が覗く耀盌。二人を導く、欠けた珠の残響。
未来を見る力があるのなら、人は悲劇を防げるのか。それとも、未来を変えようとする行為こそが、新たな悲劇を生むのか。
五百年の時を隔てた二人の選択が、まだ生まれていない一人の少年へとつながっていく。
これは英雄として記録されなかった者たちが、奪われた因果に抗った物語。
そして、長い輪廻の始まりを告げる修羅の記録である。
――応永年間、京。
陰陽師・賀茂定棟の妹、賀茂静は、女であることを理由に陰陽寮へ入れず、兄の屋敷で暦を書き写す日々を送っていた。
ある日、御所から一匹の白狐が逃げ出す。
それを境に、昨日とは内容の違う公文書、月明かりと逆向きに伸びる影、存在していたはずの人間を誰も思い出せなくなる怪異が、都を静かに侵食していく。
事件はやがて、陰陽師が狐を使って帝を呪ったという「狐使役呪詛」として処理されようとする。だが静には見えていた。
狐は誰かを呪っているのではない。もっと恐ろしい何かから逃げているのだ。
幼い頃にもらった赤い紐の腕輪と、そこに結ばれた小さな珠。価値のない飾りにしか見えなかったそれは、静に“この世界から外れた道”を見せ始める。
そして時は流れ、昭和十九年。
戦争の終わりが見えない日本で、水城律は出口王仁三郎のもとに身を寄せていた。
律が持つ古い耀盌の水面には、ときおり、まだ起きていない出来事が映る。
しかし、それは未来を言い当てる予言ではない。
空襲を逃れる町。別の場所で炎に包まれる人々。助けた一人が原因となって、さらに多くの命が失われる可能性。
見えるのは、選ばれなかった未来の断片だけ。
軍も、役人も、信奉者たちも、その力を自分たちのために利用しようとする。一方、律の周囲では、記録の改竄、存在しない命令書、他人の顔をした追跡者が現れ始める。
静が遺した狐火。律が覗く耀盌。二人を導く、欠けた珠の残響。
未来を見る力があるのなら、人は悲劇を防げるのか。それとも、未来を変えようとする行為こそが、新たな悲劇を生むのか。
五百年の時を隔てた二人の選択が、まだ生まれていない一人の少年へとつながっていく。
これは英雄として記録されなかった者たちが、奪われた因果に抗った物語。
そして、長い輪廻の始まりを告げる修羅の記録である。
第一話 御所から逃げた狐
2026/08/05 17:23
第二話 暦注の余白
2026/08/05 17:27
第三話 北へ走る足跡
2026/08/05 18:34
(改)
第四話 命令の外側
2026/08/05 18:39
第五話 流罪の書
2026/08/06 13:46
第六話 余白の証人
2026/08/06 13:53
第七話 流刑の朝
2026/08/06 14:02
第八話 消えない注脚
2026/08/07 12:22
第九話 空白を追う影
2026/08/07 13:25
第十話 天目を隠す
2026/08/07 13:27
第十一話 狐が運ぶもの
2026/08/07 13:29
第十二話 折り目に残る声
2026/08/08 16:31
第十三話 焼け残った門
2026/08/08 17:05
第十四話 釉の瞳
2026/08/08 17:07
第十五話 手紙は誰の声か
2026/08/09 13:34
第十六話 火の道を外す
2026/08/09 13:36
第十七話 予言を配らない
2026/08/10 13:21
第十八話 逃げ道に番号をつける
2026/08/10 13:24
第十九話 地面が鳴る
2026/08/10 13:27
第二十話 西倉庫の声
2026/08/11 14:02
第二十一話 海から来た返事
2026/08/11 14:05
第二十二話 生存者名簿
2026/08/12 13:52
第二十三話 自分の名を忘れる
2026/08/12 13:53
第二十四話 二人の水城律
2026/08/12 14:05
第二十五話 ひび割れた目
2026/08/13 13:41
第二十六話 予言を出せという役人
2026/08/13 13:42
第二十七話 使わないための手順
2026/08/13 13:46
第二十八話 提出の日
2026/08/13 13:55
第二十九話 四枚目を裏返す
2026/08/14 12:21
第三十話 空の器
2026/08/14 12:22
第三十一話 自分の字を疑う
2026/08/14 12:24
第三十二話 明日の日付の命令
2026/08/15 20:09
第三十三話 止める権利
2026/08/15 20:31
第三十四話 正しい顔の逮捕状
2026/08/16 15:05
第三十五話 命令を止める朝
2026/08/16 15:07
第三十六話 一人目の死
2026/08/16 15:08
第三十七話 死者を数えるな
2026/08/17 17:38
第三十八話 三本の赤旗
2026/08/17 17:45
第三十九話 本物の暗号
2026/08/17 17:47
第四十話 二つの空の器
2026/08/18 15:29
第四十一話 田正雄という名前
2026/08/18 15:30
第四十二話 追う前に残すもの
2026/08/18 15:31
第四十三話 第九観測口
2026/08/19 15:00
第四十四話 帰還信号を信じるな
2026/08/19 15:02
第四十五話 先に外す
2026/08/20 16:09
第四十六話 名前を着る者
2026/08/20 16:10
第四十七話 田正雄を死亡させる
2026/08/21 19:34
第四十八話 榊と呼べ
2026/08/21 19:36
第四十九話 鉄道を返す
2026/08/22 19:39
第五十話 名を返さない少年
2026/08/23 18:29
第五十一話 新聞は命令書ではない
2026/08/23 18:36
第五十二話 三つの封は誰のものか
2026/08/23 18:41
第五十三話 管理者はいない
2026/08/24 15:17
第五十四話 保護対象という席
2026/08/24 15:18
第五十五話 助けた敵をどこへ置く
2026/08/24 15:20
第五十六話 顔を保存しない
2026/08/25 21:14
第五十七話 夜半の消去
2026/08/25 21:15