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メンヘラオジサンの再起話。2026年7月。窓際サラリーマン。11度の休職。障がい者。破産を経てコツコツ積み上げる

最新エピソード掲載日:2026/08/06
二〇二六年七月。大阪府茨木市で暮らす四十一歳の博之は、
十回以上の休職を繰り返し、精神障害者保健福祉手帳三級を持つ
窓際サラリーマンである。株の信用取引で失敗し、
自己破産の手続き中。会社では評価されず、自分には何の価値もないと
思いながら生きていた。
一方、会社の外では「メンヘラオジサン」としてYouTubeを続け、
登録者は約四千八百人。Twitter、TikTokでも発信し、
小説投稿サイトでは作品が累計五百万回以上読まれていた。
少しずつ人から認められ始めてはいるものの、その実績を自信や
収入に変えられずにいた。
そんなある日、十年来通う散髪屋から、スナックばかりが入る
築五十年の雑居ビルに、小さな空き店舗があると聞かされる。
三階、六席ほどの古びた店。土日だけなら月三万円で借りられるという。
博之は、そこで週末限定のカレー屋兼ファン交流の店を始めることを
妄想する。昼はカレーとコーヒー、夜は少人数の飲み屋。
だがExcelで計算すると、土日をすべて使っても利益はわずかで、
自分の人件費すら残らない。価格設定、チャージ料、チップ制度、
客が来なかった場合の損失。考えれば考えるほど、商売の難しさが
見えてくる。
昔、不動産投資を何年も調べながら、結局一歩を踏み出せなかった
記憶も蘇る。博之は妄想や計算は得意だが、実際に行動する段階に
なると足が止まる男だった。
コンセプトカフェのオーナーや管理人との会話を通じて、
「カレーだけではなく、自分と話す時間にも値段を付けなければ
 続かない」と教えられる。客商売には嫌な人も来る。
 それでも、月三万円の家賃と二十万円ほどの初期費用で挑戦でき、
 開店までの過程や失敗さえYouTubeや小説の題材になる。
これは、カレー屋で大成功する物語ではない。
会社で何度も折れ、投資に失敗し、破産した中年男が、
六席の小さな店を通して、自分の時間と経験にもう一度値段を
付けていく物語である。冷蔵庫や調理器具をそろえ、営業許可を
確認し、最初の客を待つ。果たしてネット上の何百万人という数字は、
現実の六席を埋めることができるのか。
メンヘラおじさんの立ち直りは、立派な再起計画ではなく、
路地裏にある小汚い空きスナックから始まる。
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