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思い出のオークション

作者:冬馬
最新エピソード掲載日:2026/07/23
 恋人を亡くしてから、私はコーヒーが飲めなくなった。

 一緒にいるときは、あんなに好きだったのに。
 苦いだけの液体を前にすると、決まって最後の会話を思い出しそうになる。だから、カフェにも喫茶店にも近づかなかった。

 その日、雨宿りのために入った店が、たまたまそこだっただけだ。

 古びた扉の上には、控えめな文字で店名が出ていた。

 喫茶 回想。

 妙な名前だと思った。
 けれど、そのときの私は、もっと妙な一文をまだ知らなかった。
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