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城を捨てた姫と、無職の俺

作者:春日透
最新エピソード掲載日:2026/05/30
雨の音が、古いアパートの窓を叩いていた。

六畳一間。

古いエアコンは、時々ガタガタと変な音を鳴らす。

壁紙も少し剥がれていた。

でも。

部屋の中には、シチューの匂いが広がっていた。

「……よし」

月城修は、小さく息を吐く。

鍋の中では、安売りの野菜が煮えている。

見切り品の肉。

少し形の悪いにんじん。

それでも、丁寧に作った。

修は料理が好きだった。

誰かに怒られないから。

ちゃんと“できる”と思えるから。

四十歳。

無職。

収入は障害年金。

少し発達障害もある。

うまく働けなかった。

人付き合いも苦手だった。

でも。

掃除して。

洗濯して。

静かに暮らしていた。

部屋の隅には、一本のほうき。

そして、ちりとり。

修は、それを手に取る。

「……来るなら来い」

ぶんっ。

「魔王軍め。この“聖なるほうき剣”が――」

ピシャアアアアアッ!!

突然。

窓の外が、昼みたいに白く光った。

「っ!?」

雷じゃない。

光が。

空から落ちてきた。

修は思わずベランダを見る。

雨の中。

そこに、“穴”が開いていた。

青白い光が渦を巻いている。

「……は?」

心臓が嫌な音を立てる。

夢かと思った。

でも。

次の瞬間。

その光の中から、人が落ちてきた。

「きゃあああっ!?」

「うわあああっ!?」

ドサッ!!

ベランダに、少女が倒れ込む。

銀色の長い髪。

びしょ濡れのドレス。

透き通る青い瞳。

まるで物語から飛び出してきたみたいだった。

でも。

「いたたた……」

普通に痛がっていた。

修は呆然とする。

少女も、呆然としていた。

雨の音だけが響く。

数秒後。

少女が、おそるおそる口を開いた。

「……ここは」

きょろきょろと辺りを見る。

古いアパート。

洗濯物。

室外機。

安っぽいサンダル。

少女は、真剣な顔で言った。

「……地下牢、ですか?」

「違う」

反射で答えていた。

少女は、ほっとした顔になる。

「よかった……」

「いや、よくないよ!?」

修は慌てる。

「え、なに!?誰!?警察!?いや違うな!?え!?」

少女は、びくっと肩を震わせた。

「あっ……す、すみません……」

プリン
2026/05/21 16:58
休日の朝だった
2026/05/21 18:08
「風の匂いがしました」
2026/05/21 22:01
「もやし祭り開催です!」
2026/05/21 22:31
「雷竜討伐モード」
2026/05/21 22:34
「“ありがとう”記念日」
2026/05/21 23:09
「愛情弁当と、塩の危機」
2026/05/21 23:25
「お迎えに参りました」
2026/05/23 16:53
帰るべき場所
2026/05/24 19:57
「帰りたくないです」
2026/05/24 20:13
好きな人の隣
2026/05/25 22:04
「空が裂けた夜」
2026/05/27 11:30
世界が、 静まり返っていた
2026/05/30 01:40
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