白いワンピースの告白
花火が終わったあと。
屋上には、
まだ少しだけ人が残っていた。
でも。
修とフィアナは、
しばらく動けなかった。
夜風が吹く。
白いワンピースの裾が、
ふわりと揺れる。
フィアナは、
まだ花火の余韻を見上げていた。
「……綺麗でしたね」
「うん」
修は、
フィアナを見る。
花火の光はもう消えているのに。
なぜか、
その横顔の方が眩しかった。
その時。
フィアナが、
そっと呟く。
「帰りたくないなぁ……」
小さい声だった。
でも。
修には、
はっきり聞こえた。
胸が締め付けられる。
修は、
ゆっくり口を開く。
「フィアナ」
「はい?」
「……もしさ」
「本当に、帰らなくていい方法があるなら」
フィアナの瞳が揺れる。
修は、
少し照れながら続けた。
「俺」
「ちゃんと働くし」
「もっと広い部屋も探す」
「え……」
「今は六畳一間だけど」
「その……」
修は、
耳まで赤くなる。
「一緒に暮らしたい」
フィアナが、
息を呑む。
夜風が、
二人の間を通り抜けた。
フィアナの瞳が、
じわっと潤む。
「修さん……」
修は、
もう止まれなかった。
「フィアナが笑ってると安心するし」
「飯食ってる顔見るの好きだし」
「商店街で楽しそうにしてるのも好きだし」
「……好きなんだと思う」
フィアナの涙が、
ぽろっと落ちる。
修は、
まっすぐ言った。
「フィアナのこと」
「好きだ」
世界が、
静かになる。
遠くの街の音だけが聞こえた。
フィアナは、
震える声で言う。
「……ずるいです」
「え」
「そんなの」
涙を拭きながら。
でも。
すごく嬉しそうに笑って。
「わたくしも、好きになってしまいます……!」
修が固まる。
フィアナは、
真っ赤な顔のまま、
修の服をぎゅっと掴んだ。
「もう、とっくに好きでしたけど……!」
修の心臓が、
爆発しそうになる。
フィアナは、
泣きながら笑う。
「修さんといると」
「毎日が楽しいんです」
「帰りたくなくなるくらい」
「幸せなんです」
修は、
そっとフィアナの手を握る。
今度は、
迷わなかった。
フィアナも、
握り返す。
夏の夜。
花火の残り香。
白いワンピース。
屋上の風。
その全部の中で。
二人は、
ようやく同じ気持ちへ辿り着いた。




