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「夏祭りと、繋いだ手」

翌日。


修は、珍しく早起きしていた。


理由は簡単。


今日は、

商店街の祭りの日だった。


毎年やっている、

小さな夏祭り。


焼きそば。


金魚すくい。


射的。


子どもたちの笑い声。


大きな祭りじゃない。


でも。


この町の人たちは、

結構楽しみにしている。


修は、押し入れを開けながら言った。


「確か、昔の浴衣あったはず……」


すると。


後ろからフィアナの声。


「ゆかた?」


修が振り返る。


フィアナは、

首を傾げていた。


「なんですか、それ」


「夏用の服みたいなもん」


「夏限定装備ですか!?」


「ゲーム脳だなぁ」


フィアナは、

わくわくした顔になる。


「見たいです!」



数十分後。


フィアナは、

浴衣姿になっていた。


淡い水色。


小さな花柄。


銀色の髪によく似合っている。


修は、

言葉を失った。


「……」


フィアナが不安そうになる。


「に、似合いませんか?」


修は、

数秒遅れて我に返る。


「いや」


「その」


「……すごいな」


「?」


「姫感が増した」


フィアナが、

ぱあっと笑顔になる。


「ほんとですか!?」


「うん」


「あとなんか」


修は少し視線を逸らす。


「綺麗」


フィアナが固まった。


顔が、

みるみる赤くなる。


「…………」


「えっ大丈夫?」


「し、心臓が速いです……」


「重症だな」


修は苦笑する。


でも。


本当に綺麗だった。


フィアナは、

裾をぎゅっと握る。


嬉しかった。


修が、

こんなふうに褒めてくれるのが。



夕方。


祭りは賑わっていた。


提灯の光。


屋台の匂い。


子どもたちの声。


フィアナは、

完全に目を輝かせていた。


「おおお……!」


「そんな感動する?」


「お祭りです!!」


「まぁ祭りだな」


フィアナは、

きょろきょろ忙しい。


「あれは何ですか!?」


「焼きそば」


「あっちは!?」


「りんご飴」


「これは!?」


「射的」


完全に遠足の子どもだった。


すると。


フィアナの視線が、

金魚すくいで止まる。


小さな金魚たちが、

水槽の中を泳いでいる。


「……綺麗です」


修は、

その横顔を見る。


提灯の灯りに照らされたフィアナは、

少しだけ幻想的だった。


異世界から来た姫。


でも今は。


こうして、

焼きそばの匂いのする商店街で笑ってる。


それが、

なんだか不思議で。


すごく愛おしかった。


その時。


フィアナが、

そっと修の袖を掴む。


「修さん」


「ん?」


「……迷子になりそうです」


修は吹き出した。


「子どもか」


でも。


その手は、

振り払わなかった。


むしろ。


自然に握り直した。


フィアナが、

びくっとする。


修も、

少し照れていた。


「……離れると危ないからな」


フィアナは、

小さく頷く。


「……はい」


二人の手を。


夏の夜風が、

そっと撫でていった。


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