# 第四十二話 # 「フィアナ、初めてのお弁当」
# 第四十二話
# 「フィアナ、初めてのお弁当」
朝五時。
六畳一間。
まだ外は暗い。
しかし。
台所では戦いが始まっていた。
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ジュウゥゥゥ……
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フィアナが真剣な顔でフライパンを見つめる。
エプロン姿。
気合十分。
今日の目標。
**修のお弁当を作ること。**
恋人として。
一度はやってみたかった。
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「よしです!」
フィアナは卵を割る。
パカッ。
成功。
二個目。
パカッ。
成功。
三個目。
パシャッ。
床へ落下。
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「……」
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五秒沈黙。
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「姉様ぁぁぁ!」
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隣の部屋。
ルミネリアが目を覚ます。
「どうしました」
「卵が反逆しました!」
「床を拭きなさい」
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十分後。
卵焼き作成開始。
フィアナは動画で勉強済み。
完璧なはずだった。
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結果。
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真っ黒。
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「姉様!!」
「それは卵焼きではありません」
「では?」
「炭です」
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フィアナ撃沈。
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しかし。
諦めない。
恋人パワーである。
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二回目。
慎重に。
慎重に。
慎重に。
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完成。
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「できました!」
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少し形はいびつ。
でも。
ちゃんと卵焼きだった。
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フィアナ感動。
少し泣きそう。
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「卵焼きって難しいんですね……」
「料理は奥が深いです」
ルミネリアが頷く。
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そして。
お弁当完成。
* 卵焼き
* 唐揚げ
* ウインナー
* ブロッコリー
* ご飯
初めてにしては上出来だった。
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朝七時。
修が起きる。
眠そうに台所へ来る。
すると。
机の上に。
お弁当箱。
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修が固まる。
「え?」
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フィアナが照れる。
耳まで真っ赤。
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「その……」
「はい」
「作りました」
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修が目を見開く。
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「俺に?」
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フィアナが小さく頷く。
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「恋人ですから」
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修の心臓が跳ねた。
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反則だった。
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修は弁当を見る。
丁寧に作られている。
少しだけ不格好。
でも。
一生懸命なのが伝わる。
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修は優しく笑った。
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「ありがとう」
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フィアナの顔がぱっと明るくなる。
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「美味しくなかったら言ってください!」
「怖いこと言うな」
「改善します!」
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昼休み。
会社。
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修がお弁当を開ける。
同僚が覗く。
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「おっ」
「手作り?」
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修が頷く。
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「彼女の」
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周囲が騒ぐ。
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「彼女!?」
「マジか!」
「リア充だ!」
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修は少し照れた。
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卵焼きを食べる。
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少し甘い。
少し焦げてる。
でも。
すごく美味しい。
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修は思わず笑った。
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帰宅後。
フィアナが玄関まで走ってくる。
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「どうでした!?」
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早い。
まだ靴も脱いでない。
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修は笑う。
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「美味しかった」
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フィアナが固まる。
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そして。
満面の笑みになった。
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「本当ですか!?」
「本当」
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その日。
フィアナはずっと機嫌が良かった。
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夜。
六畳一間。
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フィアナは小さく呟く。
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「また作りますね」
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修も笑った。
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「楽しみにしてる」
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その言葉だけで。
フィアナは幸せそうだった。
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### 次回
**第四十三話**
# 「雨の日、一つの傘」
突然の雨。
一本しかない傘。
肩が触れる距離で歩く帰り道。
フィアナの心臓は限界寸前――。




