# 第四十三話 # 「雨の日、一つの傘」
# 第四十三話
# 「雨の日、一つの傘」
午後六時。
修の仕事が終わる頃。
空はどんより曇っていた。
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「降りそうだな」
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会社を出た瞬間。
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ポツ。
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雨。
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ポツポツ。
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ザーッ!!
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「うわっ!?」
修が慌てる。
本降りだった。
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幸い。
鞄に折り畳み傘がある。
修は傘を開く。
そして。
駅前へ向かった。
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待ち合わせ場所。
そこには。
フィアナがいた。
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びしょ濡れで。
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「フィアナ!?」
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フィアナが振り向く。
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「修さん!」
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なぜか笑顔。
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「なんで濡れてるの!?」
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「迎えに来ました!」
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理由になってない。
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修は慌てて傘へ入れる。
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「風邪ひくだろ!」
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「大丈夫です!」
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髪から水滴が落ちていた。
全然大丈夫じゃない。
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修はため息をつく。
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「帰るぞ」
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「はい!」
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二人は歩き始めた。
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しかし。
問題がある。
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傘が小さい。
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二人で入ると。
かなり近い。
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肩が触れる。
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フィアナが固まる。
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修も固まる。
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近い。
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近い。
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近い。
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フィアナの脳内。
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(近いです)
(修さんです)
(近いです)
(修さんです)
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処理落ち。
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修も落ち着かない。
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いい匂いするな。
とか。
考えないようにしている。
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無理だった。
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しばらく無言。
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雨音だけが聞こえる。
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すると。
道路の水たまり。
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フィアナが気づかず踏みそうになる。
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修が手を引く。
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ぎゅっ。
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「危ない」
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フィアナが止まる。
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手。
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繋いでる。
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前回のデート以来。
二回目だった。
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フィアナの顔が赤くなる。
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修も少し照れる。
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でも。
今回は。
離さなかった。
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二人とも。
自然だった。
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フィアナが小さく笑う。
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「安心します」
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「ん?」
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「修さんと手を繋ぐと」
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修の心臓が跳ねる。
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反則だった。
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雨はまだ降っている。
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でも。
不思議と嫌じゃない。
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六畳一間が見えてきた頃。
フィアナが空を見上げた。
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「雨の日も好きになりました」
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修が聞く。
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「なんで?」
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フィアナは笑う。
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「修さんと歩けるからです」
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修。
沈黙。
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そして。
顔を逸らした。
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「ずるいな」
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「?」
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「なんでもない」
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フィアナは意味がわからなかった。
でも。
修が少し照れているのはわかった。
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だから。
嬉しかった。
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家に着く。
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玄関を開ける。
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すると。
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ルミネリア。
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腕組み。
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待機。
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「お帰りなさい」
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「ただいま」
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「ただいまです!」
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ルミネリアの視線。
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二人の手。
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まだ繋がっている。
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沈黙。
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フィアナ。
気付く。
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「きゃあああああ!?」
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離す。
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修も慌てる。
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ルミネリアは静かに言った。
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「なるほど」
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その顔。
少し笑っていた。
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フィアナは恥ずかしくて。
そのまま部屋へ逃げ込んだ。
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雨の日。
少しだけ。
二人の距離が近づいた日だった。
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### 次回
# 第四十四話
## 「修、風邪をひく」
看病するフィアナ。
張り切るルミネリア。
そして始まる、
**「どちらが一番修を看病できるか選手権」**――。




