表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/68

「焦げたパンの朝」

朝。


カーテンの隙間から、柔らかい光が入ってくる。


台所では、修がフライパンを振っていた。


じゅう、とベーコンが焼ける音。


眠そうな顔で、卵を割る。


「……よし」


その時。


ぱたぱたと足音が聞こえた。


「おはようございます!」


フィアナだった。


昨日買ったクリーム色のワンピースを着ている。


修は少し目を丸くした。


「またそれ着てるのか」


「はい!」


フィアナは嬉しそうに、その場でくるっと回る。


「お気に入りです!」


「そっか」


修は、なんだか少し笑ってしまった。


フィアナは、そのまま台所へ近づく。


「今日は、わたくしも朝ご飯を作ります!」


「おっ」


「任せてください!」


その顔が自信満々すぎて。


修は逆に不安になった。


十分後。


「修さん」


「ん?」


「パンが黒いです」


「焦げてるな」


トースターの中で、食パンが炭になっていた。


さらに。


「卵が床に逃げました」


「逃げないんだよ普通」


べちゃっ。


床に落ちた卵を見て、フィアナが固まる。


「…………」


修は吹き出した。


「ふっ……」


「わ、笑わないでください!」


「いや無理だろこれ」


フィアナは真っ赤になる。


「料理って難しいです……!」


「魔法より難しい?」


「たぶんです……」


修は笑いながら、新しい卵を取り出した。


「ほら、貸してみ」


「……はい」


修は隣に立つ。


近い。


フィアナが少し緊張した。


「卵はこう」


こんこん。


ぱかっ。


綺麗に割れる。


「おお……!」


「で、フライパンは慌てない」


修はゆっくり教える。


フィアナは真剣に見ていた。


「……修さん」


「ん?」


「先生みたいです」


「そんな立派じゃない」


「でも、優しいです」


修は少し黙る。


それから。


照れ隠しみたいにベーコンをひっくり返した。


「……朝から恥ずかしいこと言うな」


フィアナは、えへへ、と笑う。


その笑顔を見て。


修は思う。


最初は。


異世界の姫なんて、

絶対面倒な存在だと思っていた。


でも今は。


この騒がしい朝が。


卵を落として騒ぐ声が。


嫌じゃない。


むしろ。


少し楽しい。


朝ご飯が完成する。


焦げたパン。


ちょっと崩れた目玉焼き。


でも。


二人で作った朝食だった。


「いただきます」


フィアナは、ぱくっと食べる。


そして。


「……!」


目を輝かせた。


「おいしいです!」


「そりゃよかった」


「修さん!」


「ん?」


「毎日これがいいです!」


「ハードル高いなぁ」


フィアナは笑った。


窓の外では。


春の風が、静かに吹いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ