フィアナが叫ぶ。 「姉様ぁぁぁぁ!!」
蒼い翼が、
夜空を切り裂く。
修とフィアナは、
深淵へ向かって飛んでいた。
下では、
崩れかけた名古屋の街。
上には、
世界を飲み込む黒い空。
その中心で。
ルミネリアが、
静かに二人を見つめている。
深淵の魔力が、
嵐みたいに吹き荒れる。
修は、
顔をしかめた。
「風圧やばっ……!」
フィアナが、
隣で魔法陣を維持している。
「深淵の中心に近づいてます!」
黒い腕が、
無数に襲いかかる。
修は、
光の剣を振るった。
――ズバァァン!!
蒼い斬撃。
黒い腕が、
まとめて吹き飛ぶ。
でも。
次から次へと再生する。
「キリがない!!」
フィアナの顔が険しくなる。
「深淵本体を止めない限り、無限です!」
その時。
ルミネリアが、
ゆっくり手を上げた。
瞬間。
空間が凍る。
修の身体が、
急に重くなった。
「……っ!?」
フィアナも苦しそうに息を呑む。
「重力術式……!」
深淵の圧力。
空そのものが、
二人を押し潰そうとしていた。
翼が揺れる。
落ちる。
修は、
歯を食いしばった。
「フィアナ!」
「はいっ!」
二人の魔力が、
再び共鳴する。
蒼い光。
でも。
ルミネリアは、
悲しそうに微笑むだけだった。
『やめなさい』
『これ以上戦えば、あなた達は壊れます』
フィアナが叫ぶ。
「姉様こそ!!」
「戻ってきてください!!」
ルミネリアの瞳が揺れる。
ほんの一瞬。
昔の優しい姉の顔に戻った。
でも。
次の瞬間。
深淵が、
彼女を飲み込むように脈動する。
ルミネリアが、
苦しそうに胸を押さえた。
『……っ』
フィアナの顔色が変わる。
「姉様!?」
ルミネリアの身体に、
黒い紋様が広がっていく。
侵食。
深淵が、
彼女自身を蝕んでいた。
修は、
息を呑む。
ルミネリアは、
震えながら笑った。
『もう……遅いのです』
『わたしは、深淵と繋がりすぎた』
フィアナが涙を流す。
「そんな……!」
ルミネリアは、
妹を見つめた。
その瞳だけは、
少し優しかった。
『だから、フィアナ』
『あなたまでこちらへ来てはいけない』
修とフィアナが止まる。
ルミネリアは、
ゆっくり深淵の中心へ下がっていく。
その背後で。
巨大な“門”が開き始めていた。
修の本能が警告する。
あれが完全に開けば、
終わる。
世界が。
フィアナも、
理解していた。
顔が青ざめる。
「……深淵門」
ルミネリアが、
最後みたいに微笑んだ。
『フィアナ』
『あなたは、生きなさい』
その瞬間。
深淵が暴走した。
――ゴォォォォォォッ!!
巨大な黒い奔流が、
ルミネリアごと世界へ溢れ出す。
フィアナが叫ぶ。
「姉様ぁぁぁぁ!!」




