完全解放された。
深淵が、
激しく脈動する。
黒い奔流。
崩れ続ける空。
その中心で。
修は、
巨大な光の剣を握っていた。
身体中に、
青白い亀裂が走っている。
限界だった。
それでも。
修は立っている。
フィアナは、
涙を浮かべながら叫ぶ。
「もうやめてください!!」
「修さんが壊れちゃいます!!」
修は、
苦しそうに笑った。
「でもさ」
「ここで諦めたら」
「絶対後悔する」
フィアナの瞳が揺れる。
修は、
ルミネリアを見る。
深淵に飲まれながら、
苦しそうにしている姉。
フィアナが、
どれだけ姉を大切に思ってるか。
もう、
わかっていた。
だから。
「助けるぞ」
ルミネリアが、
目を見開く。
『……なぜ』
『わたしは、世界を壊そうとしているのですよ』
修は、
少しだけ笑う。
「でも」
「フィアナのお姉ちゃんなんだろ」
ルミネリアの表情が、
崩れた。
その瞬間。
深淵が怒ったみたいに暴走する。
――ゴォォォォォッ!!
巨大な黒雷が、
夜空を埋め尽くす。
修は、
光の剣を構えた。
フィアナも、
隣へ並ぶ。
二人の魔力が、
再び重なる。
蒼い翼が、
さらに巨大化した。
フィアナが、
涙を拭って言う。
「修さん」
「ん?」
「……絶対、生きて帰りましょう」
修が笑う。
「帰ったらアイスな」
フィアナも、
少し笑った。
「二個買います」
「欲張りだなぁ」
そして。
二人は、
同時に空を蹴る。
深淵の中心へ。
ルミネリアへ。
黒い雷が襲いかかる。
修は、
巨大な光の剣を振り下ろした。
――ズバァァァァァン!!
蒼い斬撃が、
夜空を断ち切る。
黒雷が消える。
深淵が咆哮した。
無数の腕。
無数の目。
全部が、
修たちへ襲いかかる。
フィアナが、
巨大魔法陣を展開する。
「境界浄化術式――!!」
蒼い光が、
夜空いっぱいに広がった。
深淵の黒が、
少しずつ浄化されていく。
でも。
中心だけは消えない。
ルミネリアを包む、
巨大な黒い核。
フィアナが、
息を呑む。
「あれが……侵食核」
修が頷く。
「壊せばいいんだな」
「でも!」
フィアナの声が震える。
「あれを壊す時」
「姉様も巻き込まれるかもしれません……!」
修は、
ルミネリアを見る。
苦しそうに、
深淵へ囚われている姉。
その時。
ルミネリアが、
小さく微笑んだ。
『……フィアナ』
優しい声だった。
昔の姉の声。
『ごめんなさい』
フィアナの瞳から、
涙が溢れる。
『でも』
『あなたが幸せそうで、よかった』
深淵が、
さらに暴走する。
ルミネリアの身体が、
完全に黒へ染まり始める。
フィアナが叫ぶ。
「嫌です!!」
「姉様ぁぁぁ!!」
修は、
歯を食いしばった。
そして。
光の剣を、
強く握る。
胸の王鍵が、
激しく脈動する。
修は、
静かに呟いた。
「……助ける」
その瞬間。
王鍵が、
完全解放された。




