黒い奔流が、 夜空を埋め尽くす。
黒い奔流が、
夜空を埋め尽くす。
深淵そのものが、
溢れ出していた。
名古屋の空が、
完全に異世界へ侵食されていく。
赤い月。
黒い雷。
崩れていく境界。
フィアナは、
涙を流しながら手を伸ばした。
「姉様!!」
でも。
届かない。
ルミネリアの身体は、
深淵の黒へ飲み込まれ始めていた。
修は、
歯を食いしばる。
このままじゃ。
ルミネリアごと、
世界が崩壊する。
その時。
修の胸の紋章が、
強く光った。
――ドクン。
世界が脈打つ。
修の視界に、
突然知らない文字が浮かぶ。
青白い紋様。
異世界文字。
でも。
なぜか読めた。
『境界核、接続確認』
『封印権限――継承可能』
修が目を見開く。
「……は?」
フィアナも驚く。
「修さん!?」
次の瞬間。
空の巨大な門と、
修の胸の紋章が共鳴した。
轟音。
世界中の魔力が、
修へ流れ込んでくる。
痛い。
苦しい。
頭が割れそうだった。
でも。
同時に理解する。
この力は。
“境界を閉じる力”。
ルミネリアが、
深淵の中で目を見開いた。
『まさか……』
『王鍵が、起動した……?』
フィアナが、
震える声を漏らす。
「王鍵……」
修は、
苦しみながら聞く。
「知ってるのか!?」
フィアナは、
呆然と頷いた。
「王家でも伝説扱いの力です……!」
「境界そのものを管理する、“世界の鍵”」
修が、
思わず叫ぶ。
「なんでそんなの俺に!?」
ルミネリアが、
静かに答えた。
『境界の器だからです』
『あなたは、“門を開く者”であり』
『同時に、“閉じる者”でもある』
修の周囲に、
巨大な光の紋章が浮かぶ。
世界規模の魔法陣。
名古屋全体を覆うほど巨大だった。
フィアナが、
息を呑む。
「すごい……」
でも次の瞬間。
修が膝をついた。
「がっ……!」
フィアナの顔色が変わる。
「修さん!?」
修の身体に、
青白い亀裂が広がっていく。
魔力負荷。
身体が、
耐えられていない。
ルミネリアが、
苦しそうに目を閉じた。
『やめなさい……!』
『その力は、人間の器では耐えられない!』
修は、
震えながら立ち上がる。
痛い。
死ぬほど痛い。
でも。
下を見る。
街がある。
逃げ惑う人達。
壊れかけた世界。
そして。
隣には、
泣きそうなフィアナ。
修は、
笑った。
「……だったら」
「耐えるしかないだろ」
フィアナの涙が溢れる。
「無茶です!!」
「知ってる!」
修は、
光の剣を握り締める。
その剣は、
今や夜空より巨大な光になっていた。
修は、
ルミネリアを見る。
「姉ちゃんも助ける」
ルミネリアが、
目を見開く。
修は、
真っ直ぐ言った。
「フィアナ泣かせたまま終わるの、却下だ」




