# 第四十話 # 「初デートと手をつなぐまでの三時間」
# 第四十話
# 「初デートと手をつなぐまでの三時間」
日曜日。
朝。
修は鏡の前にいた。
「……これ変じゃないよな」
服を確認する。
三回目。
いや四回目かもしれない。
その時。
スマホが鳴った。
---
フィアナ
『あと一時間あります』
『まだ家ですか?』
『ちゃんと起きてますか?』
『寝坊してませんか?』
『生きてますか?』
---
修が笑う。
「心配しすぎだろ」
返信する。
---
修
『生きてる』
---
即既読。
---
フィアナ
『よかったです!!』
---
可愛い。
---
待ち合わせ場所。
駅前。
修が着くと。
そこには。
フィアナがいた。
白いワンピース。
青いリボン。
少しだけ髪を巻いている。
修は固まった。
フィアナも固まった。
お互い数秒停止。
そして。
「お、おはようございます」
「お、おう」
ぎこちない。
すごくぎこちない。
恋人なのに。
---
映画館。
二人並んで座る。
恋愛映画。
選んだのはフィアナ。
開始十分。
フィアナ号泣。
「うぅ……」
修が驚く。
「早くない?」
まだ主人公が転校しただけ。
フィアナは涙目だった。
「だって寂しそうです……」
感受性が高すぎる。
---
映画終了。
フィアナ。
大泣き。
ハンカチ一枚消費。
修は苦笑する。
「そんな泣く?」
フィアナが言う。
「修さんがいなくなったら嫌だなって思って」
修が黙る。
反則だった。
そんなこと言われたら。
照れる。
---
その後。
カフェ。
二人でケーキを食べる。
フィアナは幸せそうだった。
「美味しいです」
「よかったな」
「修さんのも一口ください」
「え?」
「一口交換です」
修が固まる。
フィアナも途中で気づく。
顔真っ赤。
「い、今の忘れてください!」
「無理だろ」
---
午後。
公園。
のんびり散歩。
天気がいい。
風が気持ちいい。
二人とも自然に笑っていた。
でも。
問題が一つ。
手。
手をつないでない。
恋人なのに。
---
フィアナが考える。
(つなぎたい)
でも。
恥ずかしい。
無理。
心臓がもたない。
---
修も考える。
(つなぐべきか?)
でも。
急すぎる?
嫌がる?
わからない。
---
結果。
三十分経過。
二人とも何もできない。
---
さらに三十分。
まだ無理。
---
さらに一時間。
まだ無理。
---
フィアナの頭の中。
『手』
『手』
『手』
それしかない。
---
すると。
小さな子供が走ってくる。
危ない。
転びそう。
フィアナがよろけた。
その瞬間。
修が反射的に手を掴む。
ぎゅっ。
時間が止まる。
フィアナ固まる。
修も固まる。
---
手。
つないでる。
---
沈黙。
十秒。
二十秒。
三十秒。
---
フィアナが小さく言う。
「……修さん」
「ん?」
「離しませんか?」
修が慌てる。
「ご、ごめん!」
すると。
フィアナが首を横に振る。
顔真っ赤。
耳まで赤い。
そして。
小さく笑った。
「そのままで大丈夫です」
修の心臓が跳ねる。
二人は。
そのまま。
夕焼けの公園を歩いた。
手をつないだまま。
---
帰宅後。
ルミネリア。
一言。
「進展しましたか?」
フィアナ。
真っ赤。
修。
真っ赤。
---
ルミネリアは察した。
そして。
静かに微笑んだ。
「なるほど」
---
次回
# 第四十一話
## 「恋人になって初めての写真」
二人で撮った一枚の写真が、六畳一間の宝物になるお話。




