「雷竜討伐モード」
夜。
外はまだ雨だった。
部屋の中には、もやし炒めの匂いが残っている。
フィアナは、テーブルに突っ伏していた。
「……もやしです」
「見ればわかる」
修は食器を洗いながら答える。
「わたくし、今日いっぱいもやしを見ました」
「うん」
「夢にも出そうです」
「そこまでか」
フィアナは、じっと皿の上を見る。
そこには、
最後のもやし一本。
「修さん」
「ん?」
「もやしって、植物なのに主張が弱いです」
「急に哲学始めるな」
フィアナは真剣だった。
修は吹き出す。
「ふっ……」
「笑いましたね!?」
「いや無理だろ」
その時だった。
ぴかっ。
窓の外が光る。
数秒後。
どおおん!!
大きな雷の音。
「ひゃああっ!?」
フィアナが飛び上がった。
椅子ごと後ろへ倒れそうになる。
修が慌てて支える。
「危ない!」
「か、雷竜です!!」
「雷だよ」
フィアナは完全に怯えていた。
修の服をぎゅっと掴む。
また雷が鳴る。
どおん!!
「ひっ……!」
「そんな怖いのか?」
「こ、この世界の雷、強すぎます……!」
修は少し困ったように笑った。
それから。
押し入れをごそごそ漁る。
「ほら」
毛布だった。
「今日は冷えるし、使え」
フィアナは、毛布を受け取る。
ふわふわだった。
「……あったかい」
「安いやつだけどな」
フィアナは、その毛布をぎゅっと抱きしめる。
また雷。
どおん!!
「ひゃっ」
フィアナが肩を縮める。
修は少し考えて。
それから、部屋の電気を消した。
「えっ?」
暗くなる部屋。
その代わり。
修は、ほうきを持った。
フィアナがきょとんとする。
修は真面目な顔で言う。
「安心しろ」
「月城修、雷竜討伐モードだ」
「……!」
フィアナの目が、ぱあっと輝く。
修は、ほうきを構える。
「来るなら来い、雷竜め……!」
どおおん!!
「うおっ、結構怖いなこれ」
「修さん!?」
さっきまで格好つけてたのに、
普通にびびっていた。
フィアナは、思わず笑ってしまう。
「ふふっ……」
「笑うなよ」
「だって……!」
また雷が鳴る。
でも。
さっきより怖くなかった。
修が、隣にいるから。
フィアナは、毛布に包まりながら小さく笑う。
「修さん」
「ん?」
「ありがとうございます」
「雷竜討伐代か?」
「はい」
修は少し笑う。
暗い部屋。
雨の音。
時々光る窓。
でも。
フィアナは思う。
お城の大きな部屋より。
今の方が、ずっと安心するな、と。




