表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/68

「小さな灯りの向こう側」

次の日。


朝から、部屋の空気は少しだけ変だった。


気まずい。


というより。


修が、妙にフィアナを意識してしまっていた。


「……」


フライパンを見つめる。


ベーコンを焼く。


じゅううう。


頭の中では、昨日の言葉が何回も再生されていた。


『修さんも、好きです』


「……うわぁ」


思わず声が漏れる。


恥ずかしい。


フィアナは、そんな修の様子に気づいていないのか。


テーブルで、のんびり牛乳を飲んでいた。


「修さん」


「っ!?」


「焦げてます」


「うわっ」


ベーコンが真っ黒だった。


フィアナは、きょとんとしている。


「今日の修さん、変です」


「そ、そんなことない」


「あります」


フィアナは真顔だった。


修は視線を逸らす。


まともに顔を見れない。


すると。


フィアナが、少し不思議そうに首を傾げた。


「……もしかして」


修の心臓が跳ねる。


「昨日のカレー、辛かったですか?」


「違うわ!」


フィアナは、本気でそう思っていたらしい。


「違うんですか?」


「違う」


「では、ベーコンですか?」


「食べ物から離れろ」


フィアナは、うーん、と悩み始める。


修は、少しだけ安心した。


この天然さに、救われてる気がする。


朝ご飯を食べ終えたあと。


修は洗い物をしていた。


その隣で。


フィアナが、ふわっと小さな光を出す。


ぽう。


暖かい灯り。


修は思わず見つめる。


何回見ても、不思議だった。


フィアナは、その光を見ながら小さく笑う。


「修さん」


「ん?」


「わたくし」


「この魔法、好きです」


「灯りのやつ?」


「はい」


フィアナは、手のひらの光を見つめる。


「城では」


「もっと大きな魔法ばかり求められてました」


「強い魔法とか?」


「はい」


「でも」


フィアナは、優しく笑った。


「修さん、この小さい光を、すごいって言ってくれました」


修は少し黙る。


そんなこと、もう忘れかけていた。


でも。


フィアナは覚えていた。


「だから」


「この魔法、好きです」


部屋の中に、小さな灯りが揺れる。


修は、なんだか胸が熱くなった。


誰かに。


自分の言葉を、

こんなに大事にされたことがなかったから。


修は、少し照れながら笑う。


「……そっか」


フィアナも笑う。


その時だった。


ぴこん。


突然。


フィアナの魔法の光が、大きく揺れた。


「え?」


部屋の空気が、少し震える。


修の顔が変わる。


フィアナも、驚いた顔をした。


そして。


手のひらの光の中に。


一瞬だけ。


見知らぬ“城”の景色が映った。


高い塔。


白い壁。


そして。


誰かの声。


『――フィアナ様』


ぶつん。


光が消える。


部屋が静まり返った。


修とフィアナは、しばらく動けなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ