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休日の朝だった

休日の朝だった。


窓から、やわらかい光が入ってくる。


月城修は、台所で味噌汁を作っていた。


鍋から湯気が立つ。


じわっと広がる出汁の匂い。


すると。


後ろから、ぱたぱたと足音が聞こえた。


「修さん!」


「おはよ」


フィアナは、寝癖のついたまま笑っていた。


銀色の髪が、ぴょこんとはねている。


「今日は何を作ってるんですか?」


「朝飯」


「それは見ればわかります」


「厳しいな」


修は苦笑する。


フィアナは鍋を覗き込んだ。


「わぁ……」


きらきらした目。


本当に毎回リアクションが大きい。


「味噌汁ですか!」


「好きだろ?」


「好きです!」


即答だった。


フィアナは、えへへ、と笑う。


修はその顔を見ながら、少しだけ思う。


最初は、

異世界の姫なんて面倒そうだと思っていた。


でも今は。


この騒がしい朝が、嫌じゃなかった。


朝ご飯を食べ終えた頃。


フィアナが突然、真剣な顔になった。


「修さん」


「ん?」


「今日は、わたくしがお掃除を極めます」


「極める」


フィアナは立ち上がる。


びしっ、と決めポーズ。


「見ていてください!」


数分後。


「ふっ……!」


フィアナは、ほうきに向かって手をかざしていた。


淡い光。


すると。


ほうきが、ふわっと浮いた。


「おお」


修が感動する。


ほうきは、そのまま床を掃き始めた。


「すげぇ!」


「どうですか!」


フィアナは得意げだった。


だが。


次の瞬間。


ぶおんっ!!


ほうきが急加速した。


「うわっ!?」


机に激突。


ティッシュが舞う。


洗濯物が飛ぶ。


さらに。


ちりとりまで浮き始めた。


「待って待って待って!?」


「止まりませんー!!」


部屋の中を暴走する掃除道具。


修は慌てて捕まえようとする。


「うおっ」


べしっ。


ほうきが顔面に当たった。


「痛ぁ!?」


数分後。


部屋は少し散らかっていた。


沈黙。


フィアナが、しゅんと座り込む。


「……失敗しました」


修は笑いをこらえながら、散らばった洗濯物を拾った。


「まぁ、便利そうではあった」


「本当ですか?」


「最初だけな」


フィアナはさらに落ち込む。


「魔法、難しいです……」


「いや」


修は、ほうきを立てかけながら言った。


「普通に掃除した方が早いかもな」


「……えっ」


フィアナが固まる。


修は掃除機を持ってくる。


ピッ。


ぶおおおおおっ。


「うわぁ……」


フィアナが悲しそうな顔をした。


「現代文明、強すぎます……」


「掃除機は強いぞ」


結局。


二人で普通に掃除することになった。


修が掃除機。


フィアナが雑巾。


床をふきふきしている。


「……地味です」


「生活ってそんなもん」


「魔法の方が格好いいです」


「でも床は綺麗になる」


フィアナは黙った。


確かに。


さっきの魔法より、今の方が部屋は綺麗だった。


しかも。


二人でやると、少し楽しい。


「修さん」


「ん?」


「雑巾がけ、ちょっと好きかもしれません」


「ハマる姫いるんだ」


フィアナは、くすっと笑った。


昼。


掃除を終えた二人は、ベランダでジュースを飲んでいた。


風が気持ちいい。


フィアナは空を見上げる。


「魔法って」


ぽつりと言う。


「もっと、すごいものだと思ってました」


修は缶ジュースを傾けながら聞く。


「でも」


フィアナは笑った。


「修さんと一緒に掃除した方が、なんだか楽しかったです」


修は少し驚く。


それから。


照れくさそうに笑った。


「……そりゃよかった」


空は、ゆっくり晴れていく。


六畳一間。


古いアパート。


魔法は少し不便だった。


でも。


そんな毎日が。


二人には、少しずつ大切になっていった。


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