旦那様は今日もよく食べる 〜婚約破棄されて嫁いだ北の辺境伯は、毒で何も食べられない方でした。ひと匙から始める餌付けで、なぜか溺愛されています〜
最新エピソード掲載日:2026/07/15
「リーゼロッテ・グランツ。貴様との婚約を破棄する」
第二王子に婚約を破棄され、身に覚えのない罪で北の辺境へ追いやられた伯爵令嬢リーゼロッテ。
その夜、彼女は前世を思い出した。味噌蔵の娘として育ち、管理栄養士として「食べられない人」の
最後の一匙を預かってきた、日本での日々を。
嫁ぎ先で待っていたのは、幽鬼のように痩せた辺境伯ヴォルフガング。
三年前に盛られた毒で味覚を失い、固形物を受けつけず、人前では決して食事をとらない男。
「この婚姻は跡目の体裁だ。私に構うな。……どうせ、長くは生きん身だ」
構うな、と言われました。ですから、構いません。
ただ、扉の前に置いてまいります――大麦を丁寧に炊いて漉した、ひと椀の重湯を。
手つかずの器。冷えた膜。それでも彼女は、毎晩あきらめない。
重湯から、粥へ。粥から、やわらかな一皿へ。
一段ずつ、閉ざされた食卓へ階段をかけていく。
やがて雪解けとともに、彼女は「穢れ」と呼ばれる山の民のもとを訪ねる。
六十年、蔑まれながら発酵の知恵を守り継いできた人々。
彼らの蔵に眠る"山神の白花"――麹。それは、閉ざされた舌を開く鍵かもしれない。
そして王都では、彼女を陥れた者たちが、北の食卓に静かに手を伸ばしていた。
これは、匙ひとつで人の心を開いていく物語。
――さあ旦那様。今日は、何を召し上がりましょうか。
第二王子に婚約を破棄され、身に覚えのない罪で北の辺境へ追いやられた伯爵令嬢リーゼロッテ。
その夜、彼女は前世を思い出した。味噌蔵の娘として育ち、管理栄養士として「食べられない人」の
最後の一匙を預かってきた、日本での日々を。
嫁ぎ先で待っていたのは、幽鬼のように痩せた辺境伯ヴォルフガング。
三年前に盛られた毒で味覚を失い、固形物を受けつけず、人前では決して食事をとらない男。
「この婚姻は跡目の体裁だ。私に構うな。……どうせ、長くは生きん身だ」
構うな、と言われました。ですから、構いません。
ただ、扉の前に置いてまいります――大麦を丁寧に炊いて漉した、ひと椀の重湯を。
手つかずの器。冷えた膜。それでも彼女は、毎晩あきらめない。
重湯から、粥へ。粥から、やわらかな一皿へ。
一段ずつ、閉ざされた食卓へ階段をかけていく。
やがて雪解けとともに、彼女は「穢れ」と呼ばれる山の民のもとを訪ねる。
六十年、蔑まれながら発酵の知恵を守り継いできた人々。
彼らの蔵に眠る"山神の白花"――麹。それは、閉ざされた舌を開く鍵かもしれない。
そして王都では、彼女を陥れた者たちが、北の食卓に静かに手を伸ばしていた。
これは、匙ひとつで人の心を開いていく物語。
――さあ旦那様。今日は、何を召し上がりましょうか。
第一話 婚約破棄された夜に、前世の味噌蔵を思い出しました
2026/07/07 14:04
第二話 硬い乾パンは、お粥にすればよろしいのよ
2026/07/07 14:05
第三話 構うな、と言われましても
2026/07/07 14:06
第四話 とんでもございません
2026/07/07 18:25
第五話 扉の前の手つかずの器
2026/07/07 20:56
第六話 王都の作法で、毒見をいたします
2026/07/08 07:00
第七話 空の器と、濡れ衣の話
2026/07/08 10:00
第八話 七晩目の問い
2026/07/08 13:00
第九話 夜ごとの儀式と、一言の芽
2026/07/08 16:00
第十話 塩の樽は命の数
2026/07/08 19:00
第十一話 雪の下の、小さな賭け
2026/07/09 07:00
第十二話 乳色の一杯
2026/07/09 10:00
第十三話 眠りは台所からもやってくる
2026/07/09 13:00
第十四話 使えない答え
2026/07/09 16:00
第十五話 帳簿の中のひとつの名前
2026/07/09 19:00
第十六話 雪の下から冬の甘いもの
2026/07/10 07:00
(改)
第十七話 雪道のなんでもない話
2026/07/10 10:00
第十八話 土瓶は、竈の脇に
2026/07/10 13:00
第十九話 ばあやの話
2026/07/10 16:00
第二十話 遠い醜聞
2026/07/10 19:00
第二十一話 白い花の名前
2026/07/11 07:00
第二十二話 腐りもので、生き延びた民
2026/07/11 10:00
第二十三話 凍った厨房で待つ
2026/07/11 13:00
第二十四話 門前の、酸っぱい青物
2026/07/11 16:00
第二十五話 樽ひとつの、覚え書き
2026/07/11 19:00
第二十六話 届かない薬
2026/07/12 07:00
第二十七話 処方の紙
2026/07/12 10:00
第二十八話 泣いたあとの手
2026/07/12 13:00
第二十九話 出立の日を決める
2026/07/12 16:00
第三十話 膳を託す
2026/07/12 19:00
第三十一話 冬は死ぬときに暴れる
2026/07/13 07:00
第三十二話 いちばん長い夜
2026/07/13 10:00
第三十三話 毛布
2026/07/13 13:00
第三十四話 もう一度、いちばん下から
2026/07/13 16:00
第三十五話 うまい
2026/07/13 19:00
第三十六話 三倍の値、ひと匙の道
2026/07/14 07:00
第三十七話 湯霧の谷
2026/07/14 10:00
第三十八話 蔵とともに、死にかけとる
2026/07/14 13:00
第三十九話 湯の熱と、ひとつまみの種
2026/07/14 16:00
第四十話 甘い
2026/07/14 19:00
第四十一話 幕間 狼の眠り
2026/07/15 07:00
第四十二話 患者に恋をしてはいけない
2026/07/15 10:00
第四十三話 触れる手
2026/07/15 13:00