夫が愛人を正妻にするそうなので、十年尽くした宰相夫人を辞めます
最終エピソード掲載日:2026/05/05
引き継ぎ資料は三冊。十年分の仕事が、それだけに収まった。
宰相夫人として費やした十年間に、夫から感謝の言葉は一度もなかった。外交文書の翻訳も、夜会の段取りも、領地の帳簿も。すべて当たり前のように消費された。
夫が愛人を正妻にすると告げた夜、ナディアは泣かなかった。離縁届は二週間前に提出済みです、と微笑んだ。引き継ぎ資料の場所を告げ、宰相府を去った。
前世の記憶を持つ彼女は、この結末をとうに知っていた。一度目の人生では、縋って捨てられ、冬の路地で息絶えた。二度目の今回は、七年かけて静かに退路を整えた。
向かった先は、南の港町。小さな貿易商会を開いた彼女のもとに、ひとりの男が現れる。無口で不器用な護衛は、毎朝なぜか好みの茶菓子を届けてくる。
妻を失った宰相府では、誰にも回せない仕事が音を立てて崩れ始めていた。
道端で見つけたという冬の花は、本当にそこに咲いていたのだろうか。
宰相夫人として費やした十年間に、夫から感謝の言葉は一度もなかった。外交文書の翻訳も、夜会の段取りも、領地の帳簿も。すべて当たり前のように消費された。
夫が愛人を正妻にすると告げた夜、ナディアは泣かなかった。離縁届は二週間前に提出済みです、と微笑んだ。引き継ぎ資料の場所を告げ、宰相府を去った。
前世の記憶を持つ彼女は、この結末をとうに知っていた。一度目の人生では、縋って捨てられ、冬の路地で息絶えた。二度目の今回は、七年かけて静かに退路を整えた。
向かった先は、南の港町。小さな貿易商会を開いた彼女のもとに、ひとりの男が現れる。無口で不器用な護衛は、毎朝なぜか好みの茶菓子を届けてくる。
妻を失った宰相府では、誰にも回せない仕事が音を立てて崩れ始めていた。
道端で見つけたという冬の花は、本当にそこに咲いていたのだろうか。
第1章
第一話 引き継ぎ資料は書棚の三段目です
2026/04/27 12:12
第二話 護衛の条件は、茶菓子付きの休憩です
2026/04/27 12:13
第三話 あの方の仕事ぶりを知っているから
2026/04/27 12:13
第四話 あんたが怒らないなら、俺が怒る
2026/04/27 12:13
第五話 道に咲いていた
2026/04/27 12:13
第六話 依頼主の意思が最優先だ
2026/04/27 12:13
第七話 私の隣にいてください
2026/04/27 12:13
第八話 俺はもう、誰も失いたくない
2026/04/27 12:13
第九話 逃げないでください
2026/04/27 12:13
(改)
第十話 家族なら、一緒に食うだろう
2026/04/27 12:13
第2章
第十一話 あの男は騎士団の恥だ
2026/04/29 18:44
第十二話 五年前、何があったんですか
2026/04/29 18:44
第十三話 あの方は、無能なんかじゃない
2026/04/29 18:45
第十四話 あんたが行くなら、俺も行く
2026/04/29 18:45
第十五話 この関税は、条約に違反しています
2026/04/29 18:45
第十六話 俺の代わりに、傷つくな
2026/04/29 18:46
第十七話 あの人の名誉を、二度と踏みにじらないでください
2026/04/29 18:46
第十八話 ありがとう
2026/04/29 18:46
第十九話 あの作戦命令書には、あなたの署名がありますね
2026/04/29 18:47
第二十話 五年前から、ずっと
2026/04/29 18:47
第3章
第二十一話 あの爺さんは、目が笑ってなかった
2026/04/30 20:08
第二十二話 さすがだ、と言われるほど逃げられなくなる
2026/04/30 20:09
第二十三話 南方経由なら、来週の荷に間に合います
2026/04/30 20:10
第二十四話 子どもが、できました
2026/04/30 20:11
第二五話 一緒に怖がればいい
2026/04/30 20:12
第二六話 父は、手放すことを知らない人です
2026/04/30 20:13
第二七話 俺は誰の剣にもならない
2026/04/30 20:15
第二八話 善意でも、檻は檻です
2026/04/30 20:14
第二九話 僕がしたことと、同じです
2026/04/30 20:14
第三十話 準備は早い方がいい
2026/04/30 20:16
第4章
第三十一話 ギルド長を引き受けてくれんか
2026/05/02 11:15
第三十二話 その条項の附則は読みましたか
2026/05/03 12:10
第三十三話 息子の上官に会いたいのです
2026/05/04 12:10
第三十四話 団長殿の下で働けて光栄でした
2026/05/05 11:42
第三十五話 一人でやった方が早い、は呪いです
2026/05/05 11:42
第三十六話 全部背負うな
2026/05/05 11:43
第三十七話 頼まれなくても
2026/05/05 11:43
第三十八話 机の脚は、いつの間に直ったんですか
2026/05/05 11:43
第三十九話 あんたの勝ちだ
2026/05/05 11:44
第四十話 引き継ぎ資料は、もう要りません
2026/05/05 11:44