夫が愛人を正妻にするそうなので、十年尽くした宰相夫人を辞めます
最終エピソード掲載日:2026/04/27
引き継ぎ資料は三冊。十年分の仕事が、それだけに収まった。
宰相夫人として費やした十年間に、夫から感謝の言葉は一度もなかった。外交文書の翻訳も、夜会の段取りも、領地の帳簿も。すべて当たり前のように消費された。
夫が愛人を正妻にすると告げた夜、ナディアは泣かなかった。離縁届は二週間前に提出済みです、と微笑んだ。引き継ぎ資料の場所を告げ、宰相府を去った。
前世の記憶を持つ彼女は、この結末をとうに知っていた。一度目の人生では、縋って捨てられ、冬の路地で息絶えた。二度目の今回は、七年かけて静かに退路を整えた。
向かった先は、南の港町。小さな貿易商会を開いた彼女のもとに、ひとりの男が現れる。無口で不器用な護衛は、毎朝なぜか好みの茶菓子を届けてくる。
妻を失った宰相府では、誰にも回せない仕事が音を立てて崩れ始めていた。
道端で見つけたという冬の花は、本当にそこに咲いていたのだろうか。
宰相夫人として費やした十年間に、夫から感謝の言葉は一度もなかった。外交文書の翻訳も、夜会の段取りも、領地の帳簿も。すべて当たり前のように消費された。
夫が愛人を正妻にすると告げた夜、ナディアは泣かなかった。離縁届は二週間前に提出済みです、と微笑んだ。引き継ぎ資料の場所を告げ、宰相府を去った。
前世の記憶を持つ彼女は、この結末をとうに知っていた。一度目の人生では、縋って捨てられ、冬の路地で息絶えた。二度目の今回は、七年かけて静かに退路を整えた。
向かった先は、南の港町。小さな貿易商会を開いた彼女のもとに、ひとりの男が現れる。無口で不器用な護衛は、毎朝なぜか好みの茶菓子を届けてくる。
妻を失った宰相府では、誰にも回せない仕事が音を立てて崩れ始めていた。
道端で見つけたという冬の花は、本当にそこに咲いていたのだろうか。
第一話 引き継ぎ資料は書棚の三段目です
2026/04/27 12:12
第二話 護衛の条件は、茶菓子付きの休憩です
2026/04/27 12:13
第三話 あの方の仕事ぶりを知っているから
2026/04/27 12:13
第四話 あんたが怒らないなら、俺が怒る
2026/04/27 12:13
第五話 道に咲いていた
2026/04/27 12:13
第六話 依頼主の意思が最優先だ
2026/04/27 12:13
第七話 私の隣にいてください
2026/04/27 12:13
第八話 俺はもう、誰も失いたくない
2026/04/27 12:13
第九話 逃げないでください
2026/04/27 12:13
第十話 家族なら、一緒に食うだろう
2026/04/27 12:13