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あなたの隣は最初から、私の場所じゃなかったみたいなので。

作者:月雅
最終エピソード掲載日:2026/04/15
三年間尽くした婚約者に「君は妹ほど可愛くないね」と言われた夜、シルヴィアは涙ではなく婚約解消届に手を伸ばした。

前の人生でも似たような男に時間を費やして後悔した記憶がある。 同じ過ちは二度と繰り返さない。

実家にも頼らず、自分の蓄えだけで隣国の小さな町に渡り、宿屋を一軒開いた。 仕入れも仕込みも帳簿も接客も全部一人。 体はきついが、この疲れは誰かの家のための消耗ではない。

客足がまばらな宿に、ある日二人連れの旅人が泊まった。 無口で無愛想な青年と、隙のない従者。 姓は名乗らない。身元欄は空白。

けれどその青年は、シルヴィアの料理を一口食べた瞬間だけ表情を変えた。 一泊のはずが連泊になり、連泊がいつの間にか長期滞在になった。

彼が何者なのかは知らない。 詮索もしない。 自分だって身元を隠している側の人間だから。

一方、シルヴィアがいなくなった元婚約者の家では、社交の歯車が一つずつ狂い始めていた。 招待状の敬称を間違え、贈答品が重複し、名のある家が距離を置いていく。 その崩壊を、シルヴィアはもう振り返らない。

閉店後の食堂で、名前だけを交わした夜があった。 指先が触れて、同時に手を引いた沈黙があった。 言葉にしないまま伝わる何かが、少しずつ積もっていった。

けれど旅人には、旅の終わりがある。

彼が発つ朝、銀の鈴が鳴る。 そのとき彼女は何を思い、彼は何を選ぶのか。
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