【連作短編054】 蟻 全37話 ―悲しみの有無、不明―
最新エピソード掲載日:2026/10/25
脳だけ、アリになれる。
研究者の篠原夏生は、没入型生体模倣システムを使い、クロオオアリの一員として巣の中を生きる実験を始めた。匂いで動き、匂いで止まり、理由ではなく構造に従って運び続ける。倒れた仲間の横を、誰も立ち止まらずに通り過ぎる。
ノートに書いた。
《悲しみの有無、不明。》
助手の村瀬が潜入を志願した。被験者の田所が加わった。三人はそれぞれ別の深さでアリになり、別の何かを持ち帰った。研究室の床には白い猫、ハルがいた。三年間、ただそこにいた。
消費される側に、何かが残るのか。
意識は、どこまで溶けられるのか。
全三十七話、完結済み。
研究者の篠原夏生は、没入型生体模倣システムを使い、クロオオアリの一員として巣の中を生きる実験を始めた。匂いで動き、匂いで止まり、理由ではなく構造に従って運び続ける。倒れた仲間の横を、誰も立ち止まらずに通り過ぎる。
ノートに書いた。
《悲しみの有無、不明。》
助手の村瀬が潜入を志願した。被験者の田所が加わった。三人はそれぞれ別の深さでアリになり、別の何かを持ち帰った。研究室の床には白い猫、ハルがいた。三年間、ただそこにいた。
消費される側に、何かが残るのか。
意識は、どこまで溶けられるのか。
全三十七話、完結済み。
第一話 潜入:なぜ運ぶのか、考える前に体が動いた。
2026/09/27 18:20
第二話 役割:選んでいないのに、選ばれている。
2026/09/28 19:39
第三話 解体:外傷はなかった。それでも、解体された。
2026/09/29 19:27
第四話 地上:人間の体に戻っているのに、匂いが残っていた。
2026/09/30 19:52
第五話 女王:動けなかった。支配しているのではなく、されていた。
2026/10/01 18:56
第六話 侵食:目を閉じると、土の匂いがした。
2026/10/02 19:14
第七話 監視:夏生の顔から、その人の輪郭が消えていた。
2026/10/03 08:42
第八話 閾値:装置には触れなかった。ただ、夢の中では行っていた。
2026/10/03 18:12
第九話 再開:体が場所に合った。二週間前より知っていた。
2026/10/04 08:06
第十話 境界:どちらが先にあるか、一瞬わからなかった。
2026/10/04 19:58
第十一話 診断:戻る場所とはどこか、夏生にはわからなくなってきた。
2026/10/05 19:19
第十二話 選択:誰の記録かわからなかった。
2026/10/06 19:31
第十三話 記録:記録できなくなったとき、誰かが記録していないといけない。
2026/10/07 19:03
第十四話 芝生:やめたいと思っていますか。——わかりません。
2026/10/08 19:00
第十五話 保留:誰が覚えているのか。
2026/10/09 19:29
第十六話 交代:私は外に出る。
2026/10/10 06:31
第十七話 初回:止まりたくなかったです。
2026/10/10 18:22
第十八話 反転:見たものを記録できる準備だ。
2026/10/11 07:22
第十九話 波形:怖かったからじゃないですか。
2026/10/11 18:19
第二十話 深度:止めたいかどうかじゃない。止めるべきかどうか、だ。
2026/10/12 07:13
第二十一話 崩れ:止まれる。それでも止める。
2026/10/12 19:23
第二十二話 静止:止めてくれて、よかったと思ってます。今は。
2026/10/13 18:52
第二十三話 次:村瀬が知らない夏生が、四つあった。
2026/10/14 18:56
第二十四話 面談:逃げた後、なぜ逃げたのかわからなかったからです。
2026/10/15 19:09
第二十五話 田所:止まりたくない、ではなかった。
2026/10/16 19:02
第二十六話 加速:止める信号が、田所の中にはない。
2026/10/17 06:20
第二十七話 測る:止める理由は十分ある。止めなかった。
2026/10/17 18:03
第二十八話 限界:私は一度も呼ばれなかった。
2026/10/18 06:53
第二十九話 告げる:田所は、私が行けなかった場所へ行った。
2026/10/18 19:39
第三十話 遮断:考えない、という選択ではなかった。考えられなかった。
2026/10/19 19:11
第三十一話 紙:軽くなったことが、寂しかった。
2026/10/20 19:15
第三十二話 村瀬:わからないことが、わかっているから
2026/10/21 19:14
第三十三話 田所、戻る:わからないまま見ていた人が、一番多くのことを記録しました
2026/10/22 19:16
第三十四話 縁:読まれながら、こちらも読んでいる気がします
2026/10/23 22:00
第三十五話 選択、再び:「先生、それ、一番正直な答えだと思います」
2026/10/24 07:43
第三十六話 最後の潜入:変わらないことが、今日は、正しかった。
2026/10/24 18:42
第三十七話 不明:それだけで、十分だった。
2026/10/25 07:33