雪解けを待つ街で
最終エピソード掲載日:2026/09/14
一九九九年の夏、加藤健は片道の航空券だけを持ってミネアポリスに降りた。二十一歳。両親はなく、顔には十六の冬からの傷がある。日本に帰る場所も、戻れる仕事もない。
交換留学の一年が終われば、この国にいる理由はなくなる。残るには学位が要り、学位には金が要り、金を作るにはいったん帰るしかない。その日から彼の暮らしは、一枚ずつの紙でできていく。学生の一年。課程の二年。そのあとの一年。就労の三年。どの紙にも、終わりの日付が刷ってある。
やがて健は、同じように日本へ帰れない女性と家族を持つ。娘が生まれ、この国の言葉で育っていく。
そして二十六年後の十二月の夜。永住権を手にしたはずの男が、台所で一人、まだ怖がっている。
あるのは手続きと、期限と、数字と、短い一言だけだ。移民、と一括りに呼ばれる人たちの、一人ぶんの二十六年。
本作は他の小説投稿サイトにも掲載しています。
交換留学の一年が終われば、この国にいる理由はなくなる。残るには学位が要り、学位には金が要り、金を作るにはいったん帰るしかない。その日から彼の暮らしは、一枚ずつの紙でできていく。学生の一年。課程の二年。そのあとの一年。就労の三年。どの紙にも、終わりの日付が刷ってある。
やがて健は、同じように日本へ帰れない女性と家族を持つ。娘が生まれ、この国の言葉で育っていく。
そして二十六年後の十二月の夜。永住権を手にしたはずの男が、台所で一人、まだ怖がっている。
あるのは手続きと、期限と、数字と、短い一言だけだ。移民、と一括りに呼ばれる人たちの、一人ぶんの二十六年。
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序
永住
2026/08/14 20:00
(改)
第一章 一年の予定で
一話 片道
2026/08/14 20:00
(改)
二話 三割
2026/08/14 20:00
(改)
三話 ケン
2026/08/14 20:00
(改)
四話 上着
2026/08/14 20:00
(改)
第二章 いったん帰る
五話 二年
2026/08/15 21:00
(改)
六話 半年ぶん
2026/08/16 21:00
(改)
七話 読めない紙
2026/08/17 21:00
(改)
第三章 正しくしていれば
八話 写らなかった一件
2026/08/18 21:00
(改)
九話 合っている
2026/08/19 21:00
(改)
十話 打席の隣
2026/08/20 21:00
(改)
十一話 三年
2026/08/21 21:00
(改)
第四章 順番
十二話 二つの暦
2026/08/22 21:00
(改)
十三話 一時間
2026/08/23 21:00
(改)
十四話 先に、と書いてあった
2026/08/24 21:00
(改)
十五話 届いた日
2026/08/25 21:00
(改)
第五章 勝ち取ったつもりで
十六話 配偶者の欄
2026/08/26 21:00
(改)
十七話 同じ日に二枚
2026/08/27 21:00
(改)
十八話 何も付いていない
2026/08/28 21:00
(改)
十九話 出てきません
2026/08/29 21:00
(改)
二十話 五つ目
2026/08/30 21:00
(改)
第六章 取っておくだけ
二十一話 二冊
2026/08/31 21:00
(改)
二十二話 二日
2026/09/01 21:00
(改)
二十三話 さかのぼる
2026/09/02 21:00
(改)
二十四話 いちばん長い時間
2026/09/03 21:00
(改)
第七章 数えているあいだに
二十五話 越さなくていい
2026/09/04 21:00
(改)
二十六話 聞き返さない人
2026/09/05 21:00
(改)
二十七話 代わりに来た人
2026/09/06 21:00
(改)
第八章 間に合うようになって
二十八話 名前は一つ
2026/09/07 21:00
(改)
二十九話 夏だけのもの
2026/09/08 21:00
(改)
三十話 四日ぶん
2026/09/09 21:00
(改)
第九章 出していないのに
三十一話 打った数
2026/09/10 21:00
(改)
三十二話 一打
2026/09/11 21:00
(改)
三十三話 同じ一つの言葉
2026/09/12 21:00
(改)
三十四話 越さなくていい季節
2026/09/13 21:00
(改)
三十五話 雪解けを待つ街で
2026/09/14 21:00
(改)