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新卒エンジニア、観察ノートを開く(中巻) 両輪を、回す

作者:音無 凪
最新エピソード掲載日:2026/06/26
「君の三年で、私も育つ」

 二度目の1on1で、諏訪マネージャーが置いてくれたその一言が、二年目になった桐谷蒼太の足場になった。

 桐谷蒼太、二十三歳。新卒二年目の春、桜並木通りで、蒼太は新人たちと、すれ違うように歩く立場になる。チームAには関西科技大学から、森山翼が配属された。一年前、自分が受け取ったものを、どう渡すか。初めて教える側に回った蒼太は、教えてみて初めて、自分が何も言葉にできていないことに気付く。

——渡し方の、前に。

 白瀬先輩との短い廊下の会話で、蒼太は一行を渡される。

 二年目は、技術と事業の両輪で進む。諏訪が事業の数字を初めて開いて見せ、「君のコードは数字に繋がる」と置く。白瀬の四百ページの失敗記録、DORAメトリクスの計測、社外の勉強会での初めての登壇、東京の友人からの誘い、そして、立花先輩との曖昧な距離。

 九月、ほぼ一人で任された本番リリースが、夜にひとつのことを起こす。蒼太は、自分の手元で起きた事象の重さを、まだ言葉にできない。

 冬、蒼太はノートに四人のマネージャーを並べる。継ぐ人、見ない人、波の人、地に縛られた人。自分がどれになるのかは、まだ分からない。

——答えは、まだ、出ない。

 葉山、黒木、アユシュ。同期六人の輪郭が、それぞれ別の方向へ伸び始めていく。

 年度の終わり、蕾の膨らみ始めた桜並木通りで同期と振り返る夜、蒼太はノートを閉じる。

——両輪を、ちゃんと、回す。

 群像と内省の両輪で描く、新卒エンジニアの二年目。
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