第55話「アユシュの選択、古川先輩の本音」
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、地名、企業名等はすべて架空のものです。実在のいかなる存在とも関係ありません。
十一月初旬、火曜日の正午。
社員食堂はいつもより少し空いていた。葉山さんが先週パッケージ事業チームに異動して、僕の左隣の定位置の席はもう葉山さんではなくなっていた。代わりに向かいの席にアユシュくんが座っていた。
「蒼太、隣、いい?」
「どうぞ」
アユシュくんは今日、弁当ではなく食堂のカツカレーを取っていた。珍しい組み合わせだった。アユシュくんはベジタリアンではないけれど、肉の脂はあまり食べない。今日はカレーの匂いに負けたのだと、本人が笑いながら言った。
「Smell の勝ちだよ、今日は」
「分かります」
僕は焼き魚定食を選んでいた。秋鯖の塩焼き、白い大根おろし、味噌汁。
二人でしばらく無言で食べた。アユシュくんはスプーンを上手に使った。ナンではなくカレーをご飯にかける食べ方も、もう日本式にだいぶ慣れていた。
「蒼太」
「はい」
「私、ちょっと相談、ある」
アユシュくんの口調はいつもより少し低かった。低いというよりはしっかり置いた低さだった。緊張しているわけではなかった。決まりかけている人の声だった。
「どうしました」
「I have a decision to make」
英語が出た。続けて日本語が来た。
「決めないといけないことがある」
「はい」
「韓国の AI スタートアップから、声、かかってる」
僕はスプーンを止めた。アユシュくんはカレーをひとさじ口に運んでから続けた。
「ソウルの会社。自動運転と Computer vision の会社。でも低リソース言語のデータにも本気。私のポジションは、その境界の research engineer」
「いつから、ですか」
「来年の三月から、というオファー」
「アユシュくん、ご存じだったのですか、その会社」
「知ってた。大学院の頃の指導教官の、研究室の卒業生が、向こうにいる。その人からの紹介」
アユシュくんはもうひとさじ運んだ。スプーンの動きは落ち着いていた。落ち着いた人の動きだった。
「日本に残るか、韓国に行くか、ネパールに帰るか」
「三つ、ですか」
「三つ。Korea が現実的なオファー。Japan は今のヨキエル続ける選択。Nepal は family に近づける選択」
「アユシュくんは、どうしたいのですか」
アユシュくんは軽く息を吐いた。
「私、どうしたいか、まだはっきりはしてない。でも半分くらいは見えてきてる」
「半分は、どこ」
「I want research、と思う」
核心の語が英語で出た。アユシュくんの台詞のいつものパターンだった。日本語で話していて、いちばん大事なところに来ると英語が出る。
「Not just maintain」
「保守だけじゃなく、ですか」
「うん。ヨキエルの組込みチームは悪くない。大沢マネージャーの機嫌の波も、もうだいぶ私の中で対処できるようになった。黒木も隣にいる。でも私の仕事の中身は八割が maintain、二割が new feature の小さい部分」
「研究は、ない」
「ない。Research はゼロ。私、論文を書く時間も読む時間も、最近ほとんどない」
アユシュくんはスプーンをカレーの皿の縁に置いた。
「もし Korea を選ぶと、私は論文を書く生活に戻る」
「アユシュくんは、書きたい人ですか」
「書きたい。Always、書きたかった。日本に来たのも、書くために来た」
「分かります」
僕は頷いた。アユシュくんが大学院から日本に来てヨキエルに就職したときの動機は、たしか、論文と現場の両方を見たいということだったはずだ。一年半経って現場は見えた。論文のほうが後回しになっていた。
「ネパールは、どうですか」
「Family、母さんと父さんと、妹のサビナ。みんな私の帰国を待ってくれてる。でもネパールには、私のやりたい research の環境がまだ整ってない」
「整ってない、というのは」
「Lab がない。自然言語処理(NLP)の最先端の lab がネパールにはまだない。私が立ち上げるには、もう少し私の側の experience が必要」
「将来はネパールで立ち上げる、というのもありですか」
「あり。十年後、十五年後の話」
アユシュくんは軽く笑った。笑いには長い視野の柔らかさがあった。
「だから今は、Korea で research、experience を積むのが現実的」
「アユシュくんの中ではもう決まりかけてる」
「半分、決まりかけてる。残りの半分は、Soota とか Ritsu とか Mitsuki とか Kenji とか Yui とか、皆と話して、自分の言葉で整える」
「整える、というのは」
「自分の心の置き場所を、自分で確かめるということ」
アユシュくんはご飯を最後のひとさじまですくった。皿が白く空いた。
「蒼太、どうしたい、と聞いた。蒼太、聞いてくれて、ありがとう」
「いえ」
「蒼太、たぶん、いちばん、観察している人。だから私、蒼太に、話したかった」
……観察している人。
心の中で、僕は繰り返した。観察、という言葉を、僕はずっと、自分が誰かを見る側のこととして使ってきた。でも、アユシュくんは、観察している人だから話したい、と言う。見るだけだと思っていた行為が、誰かにとっては、話してもいい相手の、目印になっていた。
「『どうしたい』、はいい問い」
「葉山さんの異動希望のときも、人事の沢田五郎さんが似た問いを置いた、と聞きました」
「Yes、いい問い。Eguchi マネージャーはたぶん、その問いを誰にも置かない」
「置かないですね」
「だから Suwa マネージャーとか、Shirase 先輩とか、沢田五郎さんとか、その問いを置く人が、組織にはちゃんといる」
アユシュくんはお茶をひとくち飲んだ。
「私、Korea に行くと決まったら、まず Suwa マネージャーに報告する」
「諏訪マネージャーに、ですか」
「Yes。Suwa マネージャーは私の直接の上司じゃないけど、ヨキエルの中でいちばん『どうしたい』を置いてくれた人」
「分かります」
「黒木にも、もちろん伝える」
「黒木、寂しがるかもしれません」
「Kuroki は寂しがるとちゃんと口に出す人じゃない。But I know」
アユシュくんは笑った。黒木の寡黙さを自分の語彙でちゃんと見ている笑いだった。
「決まったら、また教えてください」
「うん、教える」
二人で食器を返却口に下げた。アユシュくんの皿はご飯粒一つ残っていなかった。
午後、社内Slackのチームチャンネルに、白瀬さんから僕宛てのメンションが来た。
「桐谷くん、夕方、リードタイムの新しい集計、一緒に見てほしい」
了解、と返した。
午後の二時間半、新しい集計のスクリプトの調整をしていた。八月の終わりから十一月初めまでのリードタイム、デプロイ頻度、変更失敗率、平均復旧時間の四つの指標。九月の初めに本番障害があって、変更失敗率は一回大きく跳ねた。その跳ねた山を十月、十一月でゆっくり下げてきた。下げ方は急ではなかった。
白瀬さんとの集計レビューは夕方四時から三十分。スクリーンの数字を確認しながら「ここの平均、二日半まで来ましたね」「うん、いい」「次は二日を下回りたい」と淡い会話が続いた。会話に過剰な熱はなかった。仕事の手触りがちゃんとあった。
帰り際、白瀬さんは「今夜、お疲れさま」とだけ言ってMacBook Proを閉じた。
僕もMacBookを閉じた。十一月初旬の夕方は十月よりだいぶ暗くなるのが早かった。フロアの窓の外、桜並木通りの街灯がもう光っていた。
夜七時半。
寮には戻らず、僕は桜並木通りから一本、横の通りに足を向けた。「とんぼ」。沼田の大将の店。引き戸を開けた。
「いらっしゃい」
大将の声はいつものとおり低かった。カウンターにはすでに先客が一人。
古川先輩だった。
左から二番目の席でちろりを前に、ぼんやり目を細めて壁の品書きを見ていた。半分くらい酔っていた。古川先輩はこうやって一人でこの店に来るのが月に一度か二度。いつも誰かと一緒というよりは、一人だった。
「お、桐谷、いたか」
古川先輩は僕に気づいて軽く手を上げた。
「お疲れさまです」
「隣、座っていいぞ」
「失礼します」
古川先輩の右隣に座った。大将はおしぼりとお通し、温い緑茶をぱりと並べた。お通しは菊花のおひたしと白和え。十一月初旬の手前の献立だった。
「桐谷、何にする」
「えっと」
「ぬる燗、いいぞ」
「じゃあ、ぬる燗、いただきます」
大将に頼んだ。大将は無言で頷いた。
ぬる燗が来るまでの数分、古川先輩は無言だった。ちろりを軽く傾けて、自分のお猪口に酒を注いだ。注いだ酒の量はもう半分以下だった。
「桐谷、最近、何してる」
「リードタイムの集計をまとめたりしています」
「白瀬さんに頼まれて、か」
「はい」
「白瀬さんはいい先輩だな」
「はい」
「立花じゃなくて、白瀬さんにつけ」
古川先輩は軽く笑った。笑いの中に苦みと、ちょっとした皮肉と、それから少しだけ優しさが混ざっていた。
「分かってます」
「分かってるか、桐谷」
「はい」
「分かってるなら、いい」
古川先輩はお猪口を口に運んだ。ひとくち飲んで軽く息を吐いた。
「桐谷、お前、最近よく見える」
「よく見える、というのは」
「お前の目、よく見てるってこと」
「ありがとうございます」
「俺もな」
古川先輩はお猪口を持ったまま、視線をカウンターの木目に落とした。
「最初は熱意があったんだよ」
ぽつりとその一行が出た。
僕は息を止めた。古川先輩の口からこの種類の言葉が出るのは初めてだった。一年半、僕は古川先輩の隣で仕事をしていたけれど、この種類の言葉は一度も出てこなかった。
「俺、新卒のとき、桐谷、お前と同じくらいの目をしてた」
「先輩」
「同じくらい、というか、もうちょっとぎらぎらしてたかもな。観察なんて上品な言い方じゃなかったけど、現場で起こることを全部見て、全部変えてやろうとしてた」
古川先輩はちろりからお猪口にもうひとくち注いだ。
「俺が新卒で入ったのは、ヨキエルじゃない別の会社だった。よその県のもうちょっと小さい受託の会社。今はもうない」
「もうない、というのは」
「九年前に解散した。経営が立ち行かなくなった」
「そうですか」
「俺は解散前にヨキエルに転職してきた。だから今、ヨキエルで九年目。前の会社で三年。合わせて十二年、この業界にいる」
十二年、と僕は心の中で繰り返した。古川先輩の年齢はたぶん三十代半ば。十二年というのは、僕のこれまでの人生のほぼ半分に近い長さだった。
「桐谷、聞きたいか」
「はい」
「俺の話、たぶんつまらないぞ」
「いえ」
「いや、つまらない。でも聞きたいなら話す」
「聞きたいです」
古川先輩は軽く頷いた。
「前の会社、入って一年目、二年目、俺はよく提案を出した。社内のシステムのここを変えたらもっと楽になります、っていう類の小さい提案を、しょっちゅう上司の机に持っていった」
「はい」
「一年目の上司は聞いてくれた。ちゃんと聞いてくれた。全部は通らなかったけど、半分くらいは『よし、やってみろ』と置いてくれた」
「いい上司、ですね」
「うん、いい上司だった」
古川先輩はお猪口をゆっくり傾けた。
「三年目で上司が変わった」
「異動、ですか」
「うん。前の上司は別の事業部に。代わりに来たのは判断しない人だった」
「判断しない、というのは」
「俺が提案を持っていくと、『うん、検討するから置いておいて』って言うだけ。検討の結果はいつまでも返ってこない」
「いつまで、ですか」
「最初の提案で一ヶ月待った。返ってこない。二回目の提案でまた一ヶ月待った。返ってこない。三回目、五回目、七回目、十回目」
「十回」
「十回提案を出して、十回とも返ってこなかった」
古川先輩はちろりからお猪口にもう一度注いだ。注ぐ手はまだ落ち着いていた。
「桐谷、お前、十回提案を出して十回とも返ってこなかったら、どうする」
「……」
「どうする」
「分かりません」
「俺もな、十回目までは分からなかった。十一回目を出そうとしてペンを止めた」
「ペンを止めた」
「うん。机の上でペンを止めて、しばらく考えた。考えて結論を出した」
「結論」
「ある日、提案を出すのをやめた」
古川先輩の声は低く淡かった。淡いというよりは、もう色が引いた淡さだった。
「やめてからしばらく、楽になったと思った。提案を考える時間がなくなったから、夜の時間も楽になった」
「はい」
「でも」
「でも」
「コードを書く意欲も、薄れていった」
その一行が出た。
僕はお猪口を持ったまま動けなかった。古川先輩の話は断罪したくなる種類の話ではなかった。むしろ断罪することは、ここではいちばん意味がないことだった。
「桐谷」
「はい」
「俺がお前と同じくらいの目をしてた頃のことを、思い出した、と最初に言ったよな」
「はい」
「思い出した、と言ったが正確じゃない。俺はお前を見るたびに、思い出す」
「先輩」
「だからたぶん俺は、お前のことがちょっとだけまぶしい」
古川先輩は軽く笑った。笑いの中にもう色は引いていたけれど、ほんの少しだけ温かい色が混じっていた。
「先輩」
「桐谷、お前はああなるなよ」
「はい」
「ああ、というのは、俺ということだ」
「分かってます」
「分かってるなら、いい」
大将がぬる燗をもう一本ぱりと出した。古川先輩はちろりを受け取って自分のお猪口に注いだ。それから僕のお猪口にも軽く注いでくれた。
「桐谷、付き合え」
「はい」
二人で軽くお猪口を上げた。乾杯ではなかった。乾杯というほどの動きでもなかった。ただ二つのお猪口が軽く同じ高さに来た。それだけだった。
「先輩、ひとつだけ聞いていいですか」
「いいぞ」
「先輩はヨキエルに転職してきて、なぜ続けてこられたのですか」
「続けてる、というほどでもないがな」
「いえ、九年、続けてます」
「九年というのは、続けてる、というのとはちょっと違う」
「違う、というのは」
「やめなかった、というだけだ」
古川先輩はもうひとくち飲んだ。
「やめなかったのは、たぶんここの大将のせいもある」
古川先輩は軽く笑って、カウンターの奥の沼田の大将のほうに視線を向けた。大将は聞こえている素振りはなかったが、たぶん聞こえていた。聞こえていながら聞こえていない素振りをしている、というのが沼田の大将のいつもの感じだった。
「ここに来ると、ちょっとだけ楽になる」
「はい」
「楽になる場所が会社の外にひとつでもあれば、人はたぶん続けられる」
「分かります」
「桐谷、お前も楽になる場所、ちゃんといくつか持っとけ」
「はい」
「とんぼでもいい。澪でもいい。桜並木通りの散歩でも、寮の食堂でも、なんでもいい」
「はい」
「会社だけだと、たぶんもたない」
古川先輩はお猪口をもう一度傾けた。
「俺はたぶん、楽になる場所がここしかなかった」
「先輩」
「だから、この店を見つけてからは、ここによく来た」
その一行は淡かった。淡さの奥のところに、十年ぶんの古川先輩の夜が薄く積み重なっていた。
大将がお通しの皿を軽く下げた。それから新しい皿を出した。鰤の塩焼き、大根おろし、菊菜のおひたし。
「桐谷くん、これも食べな」
「ありがとうございます」
大将はそれだけ言って奥に戻った。
「桐谷」
「はい」
「鰤、うまいぞ、今日のは」
「はい」
古川先輩は箸を取った。鰤の身をひとくち取って口に運んだ。「うん、うまい」と短く言った。それから僕のほうにも「食え」と軽く促した。
僕も鰤を一切れ取った。脂が乗っていた。ご飯はなかったけれど、酒との相性はたぶんわざとそうなっていた。
しばらく無言で食べた。先輩と僕の無言の時間だった。無言の時間に気まずさはなかった。むしろ十二年と一年半ぶんの距離が、無言の中で少しだけ近づいていた。
夜九時半。
古川先輩は軽く立ち上がった。ふらつきはなかった。財布から札を出してカウンターに置いた。
「桐谷、また来ような」
「はい」
「お前がああならない、という証拠を、俺はちょっと見たい」
古川先輩は軽く笑った。今夜の最後の笑いには、もう苦みも皮肉もほとんどなかった。ただ温かい色だけが薄く残っていた。
「分かりました」
「ああ、ならないでくれよ」
「なりません」
古川先輩は軽く手を上げて、引き戸の向こうに消えた。大将が軽く頭を下げた。引き戸の音がぱりと閉まった。
残された僕はお猪口を見つめた。お猪口の底に少しだけぬる燗が残っていた。残りをゆっくり飲み干した。
夜十時、寮への帰り道。
桜並木通りは紅葉の中盤。葉の半分は赤く、半分はまだ緑だった。夜気は乾いていた。
歩きながら、僕は頭の中で古川先輩の話を整理していた。
最初は、熱意があった。
三年目で、上司が変わった。
判断しない人だった。
提案を、十回出した。
十回とも、返ってこなかった。
ある日、出すのを、やめた。
やめてから、コードを書く意欲も、薄れていった。
七つの段、と僕は心の中で並べた。七つの段はぱっと跳び降りるような段ではなかった。一段ずつゆっくり降りていく段だった。
燃え尽き、という言葉ではたぶん足りない。燃え尽きというよりはもう少し長い、過程の話だった。
寮の自室。机のスタンドの灯りの下で、ノートを開いた。
新しいページに、十一月四日火曜日の日付。
アユシュくん、韓国のAIスタートアップから声、検討中。日本に残る/韓国に行く/ネパールに帰る、三択。Research がしたい、と。
その下に、もう一行。
古川先輩、「とんぼ」で、本音。
その下に、七行。
最初は、熱意があった。
三年目で、上司が変わった。
判断しない人だった。
提案を、十回出した。
十回とも、返ってこなかった。
ある日、出すのを、やめた。
コードを書く意欲も、薄れていった。
七行の下に、もう一行。
燃え尽きには、過程がある。
もう一行。
古川先輩は、断罪の対象ではない。観察の対象である。
もう一行。
「桐谷、お前はああなるなよ」
その一行を、僕はもう一度読み直した。古川先輩の口から、その言葉が出るまでにたぶん十年の沈黙があった。十年の沈黙の後で、その言葉が、僕に向けて、置かれた。
軽くは受け取れない。軽くないからこそ、ちゃんと受け取った。
ノートを閉じた。窓の外、夜気の中、桜並木通りの紅葉。十一月の風が薄く流れていた。
アユシュくんは、僕を「観察している人」と呼んだ。だから話したかった、と。観察は、ただ見るだけのことだと思っていた。でも、たぶん、思っていたよりも、人に届いている。観察は、国境も越えるのかもしれなかった。
アユシュくんの三択と、古川先輩の七つの段。今夜、二つの話が僕の中に別々に置かれた。別々に置かれた二つはまだ繋がっていなかった。繋がる必要もまだなかった。
ただ繋がらないままに、二つとも確かに置かれた。それだけは確かだった。




