一億人が、あの一家を愛していた ~ある芸能一族の栄光と滅びの記録~
最新エピソード掲載日:2026/08/23
かつて、一億人がその一家を愛していた。
大部屋役者から成り上がり、笑いも涙も思いのままにした栄(さかえ)家。茶の間のまん中には、いつも彼らがいた。
娘の徳子だけが、その輪の外にいた。撮影所の隅から、光の当たる場所をただ見て、覚えているだけの子どもだった。
やがて、一家は焼かれはじめる。
けれど、世間の言うことは、ほとんど正しかった。父はたしかに人を切ってきた。掘り起こされた過去も、本物だった。だから誰も、何ひとつ言い返せなかった。
誰も手を下していない。それなのに、一人ずつ消えていく。仕事が、居場所が、名前が。
徳子は、幼い娘だけは守ろうとする。国じゅうが「あの子を守れ」と叫ぶ、その声から。
これは、滅びていく一族を、たった一人が最後まで見届けた記録である。
ただし、書いているのは、その一家を愛しすぎた女だ。どこまでが本当で、どこからが願いなのか、書いた本人にも分からない。
――盛りは、必ず過ぎる。けれど、過ぎ去ったものを、たった一人が心にとどめるかぎり、それは「無」にはならない。
大部屋役者から成り上がり、笑いも涙も思いのままにした栄(さかえ)家。茶の間のまん中には、いつも彼らがいた。
娘の徳子だけが、その輪の外にいた。撮影所の隅から、光の当たる場所をただ見て、覚えているだけの子どもだった。
やがて、一家は焼かれはじめる。
けれど、世間の言うことは、ほとんど正しかった。父はたしかに人を切ってきた。掘り起こされた過去も、本物だった。だから誰も、何ひとつ言い返せなかった。
誰も手を下していない。それなのに、一人ずつ消えていく。仕事が、居場所が、名前が。
徳子は、幼い娘だけは守ろうとする。国じゅうが「あの子を守れ」と叫ぶ、その声から。
これは、滅びていく一族を、たった一人が最後まで見届けた記録である。
ただし、書いているのは、その一家を愛しすぎた女だ。どこまでが本当で、どこからが願いなのか、書いた本人にも分からない。
――盛りは、必ず過ぎる。けれど、過ぎ去ったものを、たった一人が心にとどめるかぎり、それは「無」にはならない。
序
登場人物紹介(序)
2026/07/24 18:00
第一章 過去形
2026/07/24 18:00
第二章 無名
2026/07/25 18:00
第一部 興隆
登場人物紹介(第一部)
2026/07/26 18:00
第三章 見つけられた日
2026/07/26 18:00
第四章 帰る場所
2026/07/27 18:00
第五章 最初の星
2026/07/28 18:00
第六章 光の外側
2026/07/29 18:00
第七章 新しい星
2026/07/30 18:00
第八章 同じ野の草
2026/07/31 18:00
第九章 頂点
2026/08/01 18:00
第十章 あかり
2026/08/02 18:00
第十一章 止まらない
2026/08/03 18:00
第二部 驕り
登場人物紹介(第二部)
2026/08/04 18:00
第十二章 最後の諫め
2026/08/04 18:00
第十三章 糸が切れる
2026/08/05 18:00
第十四章 喪
2026/08/06 18:00
第十五章 空いた席
2026/08/07 18:00
第十六章 次の顔
2026/08/08 18:00
第十七章 器
2026/08/09 18:00
第十八章 敵
2026/08/10 18:00
第三部 遷り
登場人物紹介(第三部)
2026/08/11 18:00
第十九章 流出の始まり
2026/08/11 18:00
第二十章 鎌という男
2026/08/12 18:00
第二十一章 移る人々
2026/08/13 18:00
第二十二章 若き才能・舜
2026/08/14 18:00
第二十三章 宗太の空回り
2026/08/15 18:00
第二十四章 あかりの重荷の芽
2026/08/16 18:00
第二十五章 父の焦り
2026/08/17 18:00
第二十六章 妙子の述懐
2026/08/18 18:00
第二十七章 ほのかの退場
2026/08/19 18:00
第二十八章 鎌の傘の下
2026/08/20 18:00
第二十九章 舜の熱狂
2026/08/21 18:00
第三十章 宗太の孤独
2026/08/22 18:00
第三十一章 父と鎌の初対決
2026/08/23 18:00