登場人物紹介(序)
物語のはじめに、この先あなたが出会うことになる人たちを、そっと紹介します。まだ多くは語りません。先の展開に関わることも、書いていません。安心して読み進めてください。
<語り手>
栄 徳子
この物語を語る人。かつて日本中に愛された、ある芸能一族の娘です。けれど彼女自身は、カメラの前に立つことも、人に見られることも、うまく好きになれませんでした。一族の華やかさを、いつも少し離れた所から見ていた人。今は、たった一人で静かに暮らしています。
<栄家の人々>
栄 一鶴
徳子の父。名もない役者から、たった一代で芸能界の頂点にのぼりつめた人です。笑いも、涙も、思いのままに操る、まぎれもない天才。一族を次々とスターに育て上げ、茶の間のまん中に、その名を刻みました。その明るさの奥に何を抱えていたのかは、まだ誰も知りません。
栄 伊織
徳子の兄。一鶴の跡を継ぐ、実力派の俳優です。華やかな一族の中で、誰よりも真面目で、誰よりも家族思い。父の少し行きすぎるところを、いつもそっと諫める人。一家の、静かな支えでした。
そのほかにも、栄家にはたくさんの人がいます。まだ幼い子どもたち。売り出し中の若手。長く仕えてきた人たち。その一人ひとりが、これからあなたの前で、笑い、輝き、そして――それぞれの物語を生きていきます。
<この物語について>
これは、かつて一億人に愛された、ある一家の物語です。その栄光を。そして、その先に待っていたものを。語り手の徳子が、今、ひとつずつ思い出していきます。
タイトルは、過去形です。愛していた、と。その言葉の意味を、どうか最後まで、見届けていただけたら、うれしいです。




