大航海時代　Rei das Cinzas

　物語は1666年、ロンドン大火の夜から始まる。パン屋を営む父ジョン、母アビゲイル、幼い妹メアリーと共に暮らしていた6歳のエドマンドは、プディング小路の自宅を飲み込む大火によって、一瞬にして家族を失う。混乱の中、彼はただ一人、建物を次々と燃やしていく巨体の男の姿を目撃し、その光景は彼の魂に消えない烙印として刻まれた。
　孤児となったエドマンドは、温厚な商人リチャード・ハーグリーヴスに引き取られる。
　それから十四年の歳月が流れた。二十歳になったエドマンド・ヘイルは、病に伏せる養父に代わってハーグリーヴス商会を切り盛りする、冷静沈着で有能な若き商人へと成長していた。彼は養父の「何より大事なのは『信用』だ」という教えを胸に誠実に仕事に励む。
　しかし、その穏やかな日常の裏で、彼の心には家族を奪った炎と謎の男への「復讐」という黒い炎が静かに燻り続けていた。養父への恩義と、消えることのない憎悪。二つの感情の狭間で、彼の運命が動き出そうとしていた。