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泥濘(ぬかるみ)の王杖 〜泥をすすり、痛覚を刻む第三王子の王国変革録〜

作者:げりっぱ
最新エピソード掲載日:2026/10/20
玉座の兄たちは空を仰ぎ、出涸らしの弟は泥をすする。
――チートなし、小細工なし。現場の「痛覚」を刻み込んだ第三王子による、泥臭く冷徹な王国変革録。

ベルクンド王国の第三王子ライルは、高い潜在魔力を持ちながらも、宮廷では「魔力も覇気もない出涸らし」と侮られ、無害な凡庸を装って生きていた。

長兄ギリウスは見栄の大規模魔法演習で国中の魔石を枯渇させ、次兄グリードは私兵を肥大化させて物資を買い占める。王都の街灯は消え、職人街の製錬炉は火を落とし、民衆が飢えと重税に喘ぐ中、宮廷では何万枚もの金貨と人の命を駒にした権力闘争が続いていた。

そんな欺瞞に満ちた王宮を抜け出し、ライルは放課後、平民の作業着に着替えて森へと向かう。

目的はただ一つ――素性を隠し、冒険者として自らの足で立つこと。

仲間は、直剣の重さに振り回される武門の三男アルドと、損得勘定でパーティを支える商人の息子セシル。

彼らにチートや伝説の武具はない。あるのはドワーフが打った無骨な鋼、泥まみれの反復訓練、そして「身元を隠すために生活魔法しか使わない」という仮初めの制約だけ。

スライムに怯え、牙猪の突進に死を覚悟し、親友の流血に震えながらも、三人は知恵と連携で泥水をすすり、一歩ずつ森の深淵へと足跡を刻んでいく。

彼らが命懸けで持ち帰った小さな魔石は、やがて冷え切った街の工房に「本物の生産の火」を取り戻し、職人たちの心を動かし始める。

机上の空論で国を語る兄たちには見えない、血と泥と痛みの現場。

森の深淵で「死」の洗礼を浴び、己の無力さを噛み締めた出涸らしの王子が、やがてこの国の真の痛覚を背負い、玉座の虚飾を根底から揺るがす変革者へと覚醒していく――。
第1章 放課後の冒険者
第2章 死の洗礼
第35話:左手の針
2026/10/19 08:12
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