こもれび亭へようこそ 〜異世界宿屋のまかない日誌〜
最新エピソード掲載日:2026/10/23
元ホテル夜勤スタッフの白瀬灯里(しらせ あかり)、二十代後半。
人を安心して眠らせる仕事が好きだった。客の「昨夜はよく眠れました」のひとことに、まだやれる気がしていた。けれど、人手不足の夜勤が続き、いつの間にか、自分だけが眠れなくなっていた。
夜勤明けの朝、駅のベンチで意識が途切れ、目を覚ますと異世界の森にいた。湿った土の匂い、聞いたことのない鳥の声、圏外の携帯電話。立ち上がるのもやっとの灯里を拾ったのは、薪を背負ったミラという若い宿主だった。
連れていかれたのは「こもれび亭」という小さな宿。人の流れは広い街道のほうへ移り、古道を通る旅人は減っている。ミラ自身も、どこか眠れていない。古い暖炉と、軋む床と、湿気た毛布。けれど、食堂の窓からは木漏れ日が落ちて、夕食のスープは、灯里の体に静かに染みた。
灯里は、まかないと、灯りと、寝具と、夜の静けさを整えながら、ミラと二人、宿の手触りを少しずつ取り戻していく。
廊下の途中には、今は触らなくていいと言われた、古い帳簿の部屋がある。
雨の日には、廊下のいちばん奥の客室が開く。
湯気が、誰の手も触れていないのに、ふと押し返される。
宿や人の「休めていない部分」が、灯里にはぼんやり見える。けれど、誰かのかわりに眠ってあげられるわけではない。
──世界を救う物語ではありません。
異世界の森にある小さな宿で、旅人が眠るまでの時間と、その日のまかないを描く物語です。
ちゃんと眠れる場所があると、人はまた、歩き出せる。
人を安心して眠らせる仕事が好きだった。客の「昨夜はよく眠れました」のひとことに、まだやれる気がしていた。けれど、人手不足の夜勤が続き、いつの間にか、自分だけが眠れなくなっていた。
夜勤明けの朝、駅のベンチで意識が途切れ、目を覚ますと異世界の森にいた。湿った土の匂い、聞いたことのない鳥の声、圏外の携帯電話。立ち上がるのもやっとの灯里を拾ったのは、薪を背負ったミラという若い宿主だった。
連れていかれたのは「こもれび亭」という小さな宿。人の流れは広い街道のほうへ移り、古道を通る旅人は減っている。ミラ自身も、どこか眠れていない。古い暖炉と、軋む床と、湿気た毛布。けれど、食堂の窓からは木漏れ日が落ちて、夕食のスープは、灯里の体に静かに染みた。
灯里は、まかないと、灯りと、寝具と、夜の静けさを整えながら、ミラと二人、宿の手触りを少しずつ取り戻していく。
廊下の途中には、今は触らなくていいと言われた、古い帳簿の部屋がある。
雨の日には、廊下のいちばん奥の客室が開く。
湯気が、誰の手も触れていないのに、ふと押し返される。
宿や人の「休めていない部分」が、灯里にはぼんやり見える。けれど、誰かのかわりに眠ってあげられるわけではない。
──世界を救う物語ではありません。
異世界の森にある小さな宿で、旅人が眠るまでの時間と、その日のまかないを描く物語です。
ちゃんと眠れる場所があると、人はまた、歩き出せる。
第一部 こもれび亭再出発編
森の宿と、眠れない夜勤明け
2026/09/22 18:30
(改)
まかない係、はじめました
2026/09/23 18:30
(改)
夜更けの薄いスープ
2026/09/24 18:30
(改)
湿気た薪と、湯屋の朝
2026/09/25 18:30
(改)
雨の日だけのお客さま
2026/09/26 18:30
(改)
湯気の中の、小さな居候
2026/09/27 18:30
昼寝する宿
2026/09/28 18:30
(改)
張りつめた肩の客
2026/09/29 18:30
裏の畑と、初夏の風
2026/09/30 18:30
(改)
十日目の、こもれび亭
2026/10/01 18:30
玄関の灯りを見つけた配達屋
2026/10/02 18:30
川辺の朝ごはん
2026/10/03 18:30
道を覚えている、と言いながら
2026/10/04 18:30
雫村の鈴と古道の道標
2026/10/05 18:30
配達のあと、まかないの席
2026/10/06 18:30
雨樋を直す日
2026/10/07 18:30
初夏の朝の香草茶
2026/10/08 18:30
半分残した白湯
2026/10/09 18:30
風の夜と、寝具の支度
2026/10/10 18:30
風のあとの来客
2026/10/11 18:30
森から来た薬草師
2026/10/12 18:30
半分だけ眠れた朝
2026/10/13 18:30
乾燥棚の朝
2026/10/14 18:30
雨の予感と眠り草
2026/10/15 18:30
月の夜と、二人の白湯
2026/10/16 18:30
豆の配達とまかないの席
2026/10/17 18:30
食べられない行商人
2026/10/18 18:30
帳面を閉じる夜
2026/10/19 18:30
もう一人ぶんの席
2026/10/20 18:30
初夏の宿で
2026/10/21 18:30
月に一度の客
2026/10/22 18:30
眠れない夜
2026/10/23 18:30