くじで選ばれて辺境伯に嫁いだら、今年の冬名簿の一番上にわたくしの名がございました~鐘が鳴るたび、この家から一人ずつ減ります~
最終エピソード掲載日:2026/08/31
「今年の一番は、奥様でございます」
婚礼から三日目の朝、侍女は当たり前のことのようにそう言った。
ヴァルドレン辺境伯領では、毎年ひとり、籤で選ばれた娘が北の館へ送られる。
今年その籤に当たったのがセリカだった。家族は安堵し、彼女に礼を言って送り出した。
夫となったヴィルヘルムは、冷酷と噂される男だった。
婚礼の夜、彼はセリカの顔も見ずにこう言った。「この家のことは、何も覚えなくていい」
けれどセリカは、覚えてしまった。
この領には冬の決まりがある。雪が降るあいだ、冬名簿の順に、領民が一人ずつ森へ入る。
誰も戻らない。誰も嘆かない。順番が来た者は、自分から歩いていく。
名簿は書き換えられない。それがこの土地の作法だと、皆がそう言う。
――今年の冬名簿の一番上に、嫁いできたばかりのわたくしの名がございました。
セリカに、怪異を祓う力はない。順番を変える権限もない。
あるのは、昨日この家に何人いたかを覚えていることだけ。
そして彼女は知る。
冷酷と噂される夫が、毎晩ひとりで名簿を書き換えようとして、失敗し続けていることを。
鐘が鳴るたび、この家から一人ずつ減っていく。
あと十一人。
※全30話・完結まで執筆済み。毎日更新、六日目の朝に完結します。ハッピーエンドです。
婚礼から三日目の朝、侍女は当たり前のことのようにそう言った。
ヴァルドレン辺境伯領では、毎年ひとり、籤で選ばれた娘が北の館へ送られる。
今年その籤に当たったのがセリカだった。家族は安堵し、彼女に礼を言って送り出した。
夫となったヴィルヘルムは、冷酷と噂される男だった。
婚礼の夜、彼はセリカの顔も見ずにこう言った。「この家のことは、何も覚えなくていい」
けれどセリカは、覚えてしまった。
この領には冬の決まりがある。雪が降るあいだ、冬名簿の順に、領民が一人ずつ森へ入る。
誰も戻らない。誰も嘆かない。順番が来た者は、自分から歩いていく。
名簿は書き換えられない。それがこの土地の作法だと、皆がそう言う。
――今年の冬名簿の一番上に、嫁いできたばかりのわたくしの名がございました。
セリカに、怪異を祓う力はない。順番を変える権限もない。
あるのは、昨日この家に何人いたかを覚えていることだけ。
そして彼女は知る。
冷酷と噂される夫が、毎晩ひとりで名簿を書き換えようとして、失敗し続けていることを。
鐘が鳴るたび、この家から一人ずつ減っていく。
あと十一人。
※全30話・完結まで執筆済み。毎日更新、六日目の朝に完結します。ハッピーエンドです。
第一話 今年の一番
2026/08/26 07:15
第二話 名前
2026/08/26 07:15
第三話 嘆いてはならない
2026/08/26 12:15
第四話 蝋燭
2026/08/26 12:15
第五話 椅子
2026/08/26 17:15
第六話 例年でしたら
2026/08/26 17:15
第七話 斧
2026/08/26 20:15
第八話 今年は、早い
2026/08/26 20:15
第九話 一番上とは、どこか
2026/08/26 22:15
第十話 十一人の名前
2026/08/27 07:15
第十一話 勘定というもの
2026/08/27 12:15
第十二話 明日から六枚
2026/08/27 17:15
第十三話 数えるな
2026/08/27 20:15
第十四話 なんでもございません
2026/08/27 22:15
第十五話 数えないでください
2026/08/28 07:15
第十六話 まだ六人
2026/08/28 12:15
第十七話 どちらが正しいか
2026/08/28 17:15
第十八話 一、二、三、四、五
2026/08/28 20:15
第十九話 覚えててくれました?
2026/08/28 22:15
第二十話 代わりに
2026/08/29 07:15
第二十一話 泣いてない
2026/08/29 12:15
第二十二話 いま、ここにいる
2026/08/29 17:15
第二十三話 もうひとり
2026/08/29 20:15
第二十四話 十四年ぶんの紙
2026/08/29 22:15
第二十五話 おれの名前
2026/08/30 07:15
第二十六話 お数えになったことが
2026/08/30 12:15
第二十七話 覚えていてくれ
2026/08/30 17:15
第二十八話 鐘ではない音
2026/08/30 20:15
第二十九話 二百年ぶんの写し
2026/08/30 22:15
第三十話 嘆いていい冬
2026/08/31 07:15