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「安全第一は時代遅れ」と切られた迷宮公団の設計士、攻略配信のコメント欄に正解を書き込んでいたら、いつの間にか攻略の常識になっていました

作者:ramune
最終エピソード掲載日:2026/08/08
四十一年前、日本に十七の迷宮が現れた。

国は迷宮公団を作り、坑道を測り、隔壁を建て、排水を通し、退避壕を掘って、荒れ狂う異界を「人が入れる場所」に変えた。

真柴勲は、その一期生。三十七年、第七迷宮の図面を引き続けた男である。

だが時代は変わる。民営化。「手つかずの自然迷宮」ブーム。整備は攻略の自由を損なうと嗤われ、設計部門は廃止――「安全第一は、時代遅れです」。

真柴は定年を待たず、静かに職場を去った。妻に先立たれ、空っぽの午後。

そんな彼が、孫に見せられた攻略配信の画面の中に、見覚えのある岩壁を見つける。若い探索者が、三十九年前に自分が埋め戻した袋小路へ入ろうとしていた。

思わず書き込んだ。「左は行き止まりです。右へ十五分で水場があります」。

――的中。

以来、ハンドル「烏口」は攻略配信のコメント欄に現れては、行き止まりを、休眠中の罠の点検日を、死にかけた排水の音を、退避壕の扉の開け方を、淡々と書いていく。

視聴者は騒ぎ出す。烏口って何者だ。なんで全部当たるんだ。

答えは簡単だ。――だってそれ、私が掘った迷宮ですので。

やがて運営会社が「営業妨害」と彼のアカウントを消した夜、大手クランが「自然の大瀑布」へ生放送で挑む。

真柴だけが知っている。あの滝は、自然ではない。

戦わない・潜らない・当てるだけ。定年設計士がコメント欄から攻略の常識を書き換える、実務系ダンジョン配信譚。
2. 烏口
2026/07/28 12:30
4. 営業妨害
2026/07/29 16:30
8. 三年の空白
2026/07/30 17:30
9. 水の行き先
2026/07/30 21:30
10. コメ欄の主
2026/07/31 06:30
11. 全域警告
2026/07/31 09:30
14. 実施予定
2026/08/01 07:30
15. 名乗り
2026/08/01 12:40
16. 検定
2026/08/02 08:22
17. 判の夜
2026/08/02 14:30
18. 墓前
2026/08/02 20:30
19. 観測網
2026/08/03 08:30
20. 滝が止まる
2026/08/03 15:47
21. 裁定
2026/08/04 09:54
22. それでも
2026/08/04 16:20
23. 入坑
2026/08/05 09:24
24. 数字
2026/08/05 18:00
25. 工事(一)
2026/08/06 06:30
26. 工事(二)
2026/08/06 14:32
27. 判
2026/08/07 08:30
28. 放流
2026/08/07 18:30
29. 名前
2026/08/08 09:30
30. 今日の点検
2026/08/08 19:30
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