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泣き女のわたくしが呼ばれたのは、誰ひとり泣かなかった公爵夫人の葬儀でした ~涙を売る令嬢と、涙を忘れた公爵~

最終エピソード掲載日:2026/08/17
わたくしの仕事は、他人の代わりに泣くことです。

没落したヴァレンド子爵家の娘リゼットは、王都でいちばん高く涙を売る「泣き女」。葬儀に呼ばれ、遺族の代わりに声を上げて泣く。悲しみを完璧に演じられる彼女は、けれど自分のためには、一度も泣いたことがない。

その日呼ばれたのは、ラングヴァイ公爵夫人の葬儀だった。冷酷と噂される公爵オルデリクは、妻の棺の前で一滴の涙も流さなかった。
──いいえ。おかしいのは、あの方だけではありません。
あの広間にいた誰ひとり、本当には泣いていなかったのです。

葬儀が終わった夜、公爵はリゼットにこう告げた。
「これから一年、この屋敷のすべての葬儀で泣いてほしい」

その言葉のとおり、公爵家では人が死に続ける。そのたびにリゼットは泣き、そして数える。誰が泣いていないか。誰が泣きすぎているか。泣き女は葬儀の場で口をきくことを許されない。だから彼女は、何も言わずに、ただ見ていた。

やがて彼女は気づいてしまう。
──あの夜の棺が、最初から軽かったことに。

[ 全30話]
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