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死者同士の会話は、聞いてはいけない ―午前零時十三分の町内放送―

作者:たむ
最終エピソード掲載日:2026/08/20
高校二年生の音無透真は、幼い頃から幽霊を見ることができた。

幽霊と話すこともできる。

そして透真には、もう一つだけ、誰にも知られていない能力があった。

幽霊同士の会話を聞くことができるのだ。

ただし、死者同士の言葉は、人間の声としては聞こえない。

壁を爪で引っかく音。

誰もいない廊下を歩く足音。

鳴るはずのない電話。

止まった風鈴。

遠くで繰り返される踏切の警報音。

それらの音に交じって、死者たちは会話をしている。

怖がりな透真は、できる限り幽霊と関わらずに生きてきた。

しかし、亡くなった祖母から言われた言葉だけは忘れられない。

「死んだ人が怖いんじゃない。誰にも届かない言葉のほうが、ずっと怖いんだよ」

透真は、死者が残した最後の想いを家族や友人へ届けるようになる。

謝罪。

感謝。

告白。

誰にも発見されていない遺品の場所。

自分を殺した人間の名前。

死者の言葉を届けるたび、透真は少しずつ恐怖と向き合っていく。

そんな夏の夜、午前零時十三分。

町内放送のスピーカーから、存在しないはずの女性の声が流れる。

『明日、こちらへ来る方のお名前をお知らせします』

放送が読み上げたのは、透真の同級生・早坂澪の名前だった。

翌日、学校に現れた澪は生きていた。

ところが放課後の教室で、二人の幽霊が澪を見ながら話している。

「この子、まだ自分が死ぬことを知らないんだね」

「明日の午前零時十三分には、僕たちと話せるようになるよ」

そして澪の背後には、彼女と同じ顔をした幽霊が立っていた。

透真は、死者の想いを届けるため、そしてまだ生きている澪を死者の会話から取り戻すため、十三年前に途絶えた町内放送の秘密を追い始める。

だが、調査を続ける透真の耳にも、少しずつ異変が起こる。

生きている人間の声が遠くなり、死者たちの声だけが鮮明になっていく。

やがて幽霊たちは、透真本人の知らないところで話し始める。

「もうすぐだね」

「ようやく、この子にも伝えられる」

「音無透真が、本当はいつ死んだのかを」
第一部 死者からの伝言
第二部 未来から来た死者
第三部 死者同士の最後の会話
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