第7話 死者が数えるもの
死者が数えているのは、亡くなった人の数とは限りません。
空いた椅子。
届かなかった言葉。
呼ばれても返事をしなかった人。
数が一つ合わないとき、死者たちは生きている誰かを加えようとします。
「私、明日死ぬの?」
早坂澪の声が、旧図書準備室に小さく響いた。
冗談のように笑おうとしている。
だが、頬は青ざめ、握った両手は震えていた。
透真は答えられなかった。
澪の背後にある窓ガラス。
そこには、もう一人の澪が映っている。
同じ制服。
同じ髪型。
同じ顔。
ただし、首には黒く細い線が一周していた。
制服の胸元は赤黒く染まり、濡れた袖から水が滴っている。
未来の幽霊。
まだ生きている人間から生まれた、死後の姿。
『うん』
窓の中の澪が笑う。
『明日から、私たち三人で話せるよ』
透真は窓から目を逸らせなかった。
「あなたは……誰ですか」
「誰に話してるの?」
生きている澪が振り返る。
窓には、自分の姿しか見えていないらしい。
未来の澪は、ガラスの中から透真を見ている。
『早坂澪』
「目の前に本人がいます」
『知ってる』
「なら、あなたは澪さんではありません」
『どうして?』
「まだ亡くなっていない」
『明日死ぬよ』
その声に重なって、水の落ちる音がした。
ぽたり。
ぽたり。
ぽたり。
一滴ごとに、冷たい言葉が流れ込んでくる。
『死ぬことが決まったら、先に声だけが来るの』
「何が決めるんですか」
『席』
透真は篠崎を見た。
担任は扉の前に立ち、未来の幽霊がいる窓を睨んでいる。
姿は見えていないはずだ。
しかし、何かがいることは感じている。
「先生」
「話しかけるな」
「でも」
「そいつは早坂じゃない」
篠崎が低く言った。
「未来の姿を使って、お前に信じ込ませようとしている」
『また嘘をついてる』
窓の中の澪が笑う。
『先生は、いつも大事なところで嘘をつく』
透真は篠崎へ視線を戻した。
「未来の澪さんが、先生は嘘をついていると言っています」
「その言葉を俺へ伝えるな」
「なぜですか」
「聞けば、向こうの会話へ参加したことになる」
「もう聞いています」
「お前は聞くだけで済む。俺たちは違う」
「どう違うんですか」
篠崎は答えなかった。
澪が透真の腕を掴む。
「音無くん」
「はい」
「私の後ろに、何がいるの?」
透真は迷った。
本人へ、あなたの幽霊がいますと言うべきなのか。
伝えれば、恐怖を与える。
黙れば、澪は何も知らないまま明日の午前零時十三分を迎える。
「あなたと同じ姿をした幽霊です」
澪の指が強く食い込んだ。
「私の?」
「はい」
「どんな姿?」
「首に、痕があります」
澪は無意識に自分の首へ触れた。
「どうやって死ぬの?」
「分かりません」
『教えてあげようか』
未来の澪が、窓ガラスの内側から指を伸ばす。
爪がガラスを引っかいた。
きい。
耳の奥を削るような音。
『音で死ぬの』
「音で?」
『最後まで聞くから』
「何をですか」
未来の澪は答えず、自分の耳を指差した。
耳の穴から、細い黒い糸が伸びている。
糸は首へ巻きつき、何重にも絡まっていた。
『聞き終わったら、声が止まる』
「誰の声が?」
『生きている私の声』
生きている澪には、透真の質問しか聞こえていない。
「何て言ってるの?」
「音を最後まで聞くと、亡くなるようです」
「どんな音?」
「そこまでは話してくれません」
『まだ言えない』
未来の澪が唇へ指を当てる。
『決まってないから』
「死ぬことは決まっているのに、死に方は決まっていないんですか」
『席が先』
少女は笑った。
『座り方は、あと』
◇
旧図書準備室の中央に、古い椅子が一脚置かれていた。
先ほどまではなかった。
木製の小さな椅子。
座面には、黒い染みが広がっている。
その背もたれに、白い文字が浮かび上がった。
早坂澪。
澪にも椅子は見えているらしい。
「これ、さっきからあった?」
「ありませんでした」
篠崎が椅子へ駆け寄る。
「触るな!」
誰も触れていない。
それでも椅子は床を滑り、澪の背後へ回り込んだ。
脚が、ぎい、と鳴る。
『座って』
未来の澪が囁く。
生きている澪の膝が曲がった。
「え?」
見えない手に肩を押されるように、体が椅子へ近づいていく。
透真は澪の腕を引いた。
「座ってはいけません!」
「勝手に体が……!」
椅子の下から、無数の声が聞こえる。
『一人空いた』
『席が空いた』
『早く座らせて』
『数が合わない』
踏切にいた死者たちとは違う。
もっと多い。
声の主は見えない。
床の下。
壁の中。
本棚の奥。
校舎全体に、死者の言葉が染み込んでいる。
「死者は何を数えているんですか!」
透真は篠崎へ叫んだ。
「死亡者じゃないんですよね!」
篠崎は椅子の背もたれを掴んだ。
皮膚が触れた瞬間、手のひらから煙が上がる。
「先生!」
「死者の席だ!」
篠崎は痛みに顔を歪めながら、椅子を澪から引き離す。
「十三年前、町に十三の席が作られた!」
「誰が作ったんですか」
「知らない!」
「また嘘ですか!」
「本当に知らない!」
椅子が激しく震えた。
ぎし。
ぎし。
ぎし。
座面の黒い染みが、人の顔の形になる。
『最初は十三人』
『一つ空いた』
『戻ってきた子ども』
『席を返して』
透真の胸が痛んだ。
戻ってきた子ども。
自分のことだ。
「僕が生き返ったから、席が一つ空いた」
篠崎は何も言わない。
「その空席を埋めるために、誰かが死ぬんですか」
「違う」
「では、何ですか」
「席は死者を座らせるものじゃない」
篠崎の声が震えていた。
「声を座らせるためのものだ」
「声?」
「十三年前、災害で亡くなった者たちの声が町内放送へ流れ込んだ」
大雨。
土砂崩れ。
避難放送。
旧町内放送局の火災。
多くの死者が出た夜。
「死者は自分が死んだことを理解できず、放送を使って家族を呼び続けた」
篠崎は椅子を押さえたまま話す。
「聞いた人間は、呼ばれた場所へ向かった。災害現場へ戻り、そこで命を落とした」
「呼名女が始めたんですか」
「分からない。最初からいたのか、死者の声が集まって生まれたのか」
『先生は見たよ』
未来の澪が言った。
『放送室の中にいた女を』
「未来の澪さんは、先生が呼名女を見たと言っています」
篠崎の目が揺れた。
「見ていない」
『赤い傘』
未来の澪が笑う。
『顔のない女』
「赤い傘を持った、顔のない女」
「やめろ」
『濡れていないのに、水の音がする』
「水の音がする」
「伝えるな!」
篠崎が怒鳴る。
その声に反応し、椅子の下から白い手が伸びた。
篠崎の足首を掴む。
「くっ……!」
「先生!」
「話を続けるな! あいつは聞かせることで近づいてくる!」
『もう近くにいるよ』
未来の澪が窓の外を見る。
校庭に設置された町内放送のスピーカー。
その上に、赤い傘が浮かんでいた。
傘の下に顔はない。
白い首。
濡れた黒髪。
長い制服のような服。
雨は降っていない。
それなのに、女の足元から水が滴っている。
ぽたり。
『九人』
ぽたり。
『十人』
ぽたり。
『十一人』
女は何かを数えていた。
透真は窓へ近づく。
「呼名女……」
赤い傘がゆっくり傾いた。
顔のない女が、こちらを見上げる。
口がないはずの顔から、放送の声が聞こえた。
『十二人』
透真の背後。
椅子の背もたれに書かれた澪の名前が消える。
代わりに、新しい名前が浮かんだ。
音無透真。
「どうして僕の名前が」
椅子が澪を離れ、透真へ向かって滑り始める。
『十三人』
呼名女の声。
『数が合いました』
床が大きく揺れた。
椅子の下から黒い腕が伸び、透真の腰へ絡みつく。
「音無くん!」
澪が透真を掴む。
篠崎も椅子から手を離し、透真の肩を引いた。
だが、黒い腕の力は強い。
透真の膝が曲がる。
座面が背後へ迫る。
「僕が座れば、澪さんは助かるんですか!」
「そんなことを考えるな!」
「答えてください!」
「一時的には助かる!」
篠崎の声が響く。
「だが、お前が座れば、生者へ戻れなくなる!」
「すでに一度死んでいるから?」
「お前の体は、今も空いた席から借りているようなものだ!」
「意味が分かりません!」
「俺にも全部は分からない!」
椅子が透真の膝裏へ触れた。
冷たい。
体の中から音が消える。
澪の叫び。
篠崎の声。
椅子の軋み。
すべてが遠くなる。
最後に、自分の心臓だけが聞こえた。
どくん。
どくん。
そして。
止まった。
◇
透真は、暗い講堂に立っていた。
客席には十三脚の椅子が並んでいる。
舞台も、壁も、天井も見えない。
闇の中に椅子だけが浮かんでいた。
十二脚には人が座っている。
顔は見えない。
子ども。
老人。
制服姿の少女。
作業着の男。
皆、口元に黒い糸を巻かれている。
十三脚目だけが空いていた。
その背もたれには、音無透真と書かれている。
『座って』
背後から母の声がした。
透真は振り返る。
音無小夜子。
透真の母。
十三年前に亡くなった姿。
白いワンピース。
長い黒髪。
優しい顔。
空き家で現れた偽物とは違う。
透真には分かった。
目の前にいるのは、本物だ。
「母さん」
小夜子は悲しそうに笑う。
『大きくなったね』
「どうして、ここにいるの」
『ずっといたよ』
「僕を呼んだの?」
小夜子は答えない。
「帰ってきてほしいの?」
『透真』
「母さんが、僕を生き返らせたんでしょう?」
小夜子の姿が揺れる。
水面へ映った影のように、輪郭が崩れかける。
『座らないで』
透真は空席を見る。
「でも、座らなければ澪さんが死ぬ」
『あの子を助ける方法は、ほかにある』
「何をすればいい?」
『数を変えて』
「数?」
『死者は、人数を数えているんじゃない』
十二脚の椅子に座る者たちが、一斉に顔を上げた。
口に巻かれた黒い糸が軋む。
『言葉を数えている』
小夜子の声が遠くなる。
『届けられなかった、最後の言葉』
「十三人分?」
『違う』
椅子が一つずつ増え始めた。
十四。
十五。
二十。
五十。
暗闇の奥まで、無数の椅子が並ぶ。
誰もが口を塞がれ、声を奪われている。
『この町で、届かなかった言葉の数』
死者たちが身をよじる。
椅子の脚が床を叩く。
こん。
こん。
こん。
三回。
『呼名女は、言葉が届かなかった人を席へ座らせる』
「僕が想いを届ければ、席が空く」
『そう』
「空いた席に、新しい人を座らせる」
『そう』
「僕がしていることは、誰かを助けて、別の誰かを危険にしているの?」
小夜子は目を伏せる。
『今のままなら』
透真の胸が締めつけられた。
美月。
ハナ。
康介。
真帆。
彼らの想いを届けた。
救えたと思っていた。
しかし、そのたびに席が空き、澪のような生者が選ばれていた。
「では、届けないほうがよかった?」
『違う』
小夜子は強く首を振る。
『届かなかった言葉は、怪異を育てる』
「届けても、次の人が選ばれる」
『だから、数を変えるの』
「どうやって?」
母が透真へ近づく。
頬へ手を伸ばす。
指先が触れる直前、赤い傘が二人の間へ開いた。
ばさり。
小夜子の姿が見えなくなる。
『お話の時間は終わりです』
呼名女。
傘の下に顔はない。
白く平らな皮膚だけがある。
『音無透真さん』
「どいてください」
『あなたのお席をご用意しました』
「座りません」
『早坂澪さんを助けたくないのですか』
「助けます」
『では、お座りください』
「別の方法を探します」
『見つかりません』
顔のない女から、何人もの声が流れる。
子ども。
母親。
老人。
男。
すべて、死者から奪った声。
『あなたは優しい』
『死者を放っておけない』
『生者も見捨てられない』
『だから、最後には自分を差し出す』
呼名女が手を伸ばす。
『あなたのような人を、十三年間待っていました』
「僕を知っているんですか」
『あなたの最初の声をいただきました』
「最初の声?」
『四歳のあなたが、死ぬ直前に叫んだ言葉』
透真の頭に痛みが走った。
炎。
煙。
赤い警報灯。
旧町内放送局。
幼い自分。
何者かへ向かって叫んでいる。
しかし、言葉は思い出せない。
『お母さんは、その声を返してほしいと願いました』
「母さんが僕を生き返らせた」
『代わりに、自分の声を差し出して』
透真は息を止めた。
「母さんの声は、あなたが持っている?」
『一部だけ』
呼名女の平らな顔に、口が現れる。
その唇は小夜子と同じ形をしていた。
『透真』
母の声。
『おかえりなさい』
透真の体が、空席へ引かれる。
母の声を取り戻したい。
最後の言葉を聞きたい。
なぜ自分を生き返らせたのか知りたい。
その思いが、椅子へ座れと囁いている。
『座れば、すべて返します』
「嘘です」
『なぜ?』
「母さんは、座るなと言った」
呼名女の口が消える。
「あなたが母さんの声を持っていても、母さんの想いまでは持っていない」
『想いなど、音にならなければ存在しません』
「違います」
透真は空席の背もたれを掴んだ。
「声にできなかったから、死者は残っている」
椅子が揺れる。
「言葉にならなかった想いがあるから、僕は届けたいと思う」
『ならば座りなさい』
「座るためではありません」
透真は椅子を持ち上げた。
見た目よりも軽い。
空席だからだ。
「数を変えます」
『何をするつもりですか』
「十三席あるから、十三人必要になる」
透真は椅子を床へ叩きつけた。
ばきん。
背もたれが折れる。
暗闇に大きな亀裂が走った。
『やめなさい』
「席がなければ、座る人もいません!」
透真はもう一度、椅子を叩きつける。
脚が折れた。
呼名女の声が、耳をつんざく絶叫に変わる。
『それはあなたの命です!』
「だったら、僕の好きにします!」
椅子が完全に砕けた。
◇
「音無くん!」
澪の声が戻ってきた。
透真は旧図書準備室の床に倒れていた。
澪が肩を揺さぶっている。
篠崎は、砕けた木製の椅子を見下ろしていた。
座面には、もう名前がない。
「生きてる?」
透真は息を吸う。
「たぶん」
「たぶんじゃなくて!」
「生きています」
心臓は動いている。
声も出る。
だが、喉の奥に何か欠けたような感覚があった。
大切な音を一つ、どこかへ置いてきたような空白。
「椅子を壊したのか」
篠崎が尋ねる。
「はい」
「死者の席を?」
「少なくとも、僕の名前が書かれた席は」
篠崎は砕けた木片を拾う。
木片は黒い灰へ変わり、指の間から落ちた。
「無茶をする」
「先生には言われたくありません」
「それで早坂は?」
透真は澪の背後を見る。
窓ガラスに、未来の幽霊はまだ映っている。
しかし首に巻かれていた黒い糸が、一本切れていた。
『少しだけ、変わった』
「まだ、います」
澪の顔が強張る。
「私の幽霊?」
「はい。でも、さっきとは少し違います」
「死ななくなった?」
『明日死ぬ』
未来の澪は静かに言った。
「まだ明日死ぬと言っています」
「そう簡単には変わらないか」
澪は深く息を吐いた。
怖いはずなのに、逃げようとはしない。
「じゃあ、何をすればいい?」
「未来のあなたと話します」
「どうやって?」
「僕が間に入ります」
『私は嫌』
未来の澪が笑う。
『生きている私とは、話したくない』
「なぜですか」
『嫌いだから』
透真は言葉に詰まった。
生きている澪が首を傾げる。
「何て?」
「未来のあなたは、今のあなたが嫌いだそうです」
「自分なのに?」
『自分だから』
「自分だからだそうです」
澪は窓ガラスへ向き直る。
自分の姿しか見えていない。
それでも、その向こうにいる何かへ話しかけた。
「私の何が嫌いなの?」
未来の澪は答えない。
透真が同じ質問を伝えようとすると、少女が首を横に振った。
『今は言わない』
「なぜですか」
『言ったら、死に方が決まるから』
未来の澪の首にある黒い糸が、再び一本増えた。
透真は気づいた。
この幽霊との会話そのものが、澪の死を具体化している。
「これ以上、聞いてはいけない」
透真は窓から離れた。
「会話を続けるほど、澪さんの死に方が決まっていきます」
「でも、何も聞かなかったら防げない」
「聞きすぎても危険です」
「難しいね」
「怪異はいつも説明が足りません」
篠崎が扉を開ける。
「場所を変えるぞ」
「どこへ?」
「旧町内放送局だ」
透真と澪は同時に篠崎を見る。
「先生、さっきまで関わるなと言っていましたよね」
「状況が変わった」
「椅子を壊したから?」
「あれは呼名女の一部だ。壊したことは、向こうにも伝わった」
「怒っていますか」
「間違いなく」
透真は帰りたくなった。
「今日はもう家へ帰ってもいいですか」
「明日の午前零時十三分まで、早坂を一人にできない」
「私も行く」
澪は即答した。
「自分が死ぬ理由なら、自分で調べたい」
「危険です」
「家に帰っても危険なんでしょう?」
「そうですが」
「なら、知っている人と一緒にいたほうがいい」
澪は透真を見る。
「幽霊が見える人と」
「僕は守れるほど強くありません」
「踏切で先生を助けた」
「怖くて、ほとんど動けませんでした」
「それでも手を離さなかった」
澪は少し笑う。
「私は、そういう人のほうが信用できる」
透真は返事ができなかった。
褒められることに慣れていない。
特に、怖がっていることを認めたうえで信用すると言われたことはなかった。
「行くぞ」
篠崎が廊下へ出る。
三人が準備室を出た直後。
背後で、椅子の脚が床を叩いた。
こん。
透真が振り返る。
砕いたはずの椅子が、部屋の中央に戻っていた。
こん。
二回目。
背もたれに新しい名前が浮かぶ。
篠崎修司。
こん。
三回目。
その下に、もう一つ。
早坂澪。
そして、一番下に。
音無透真。
三人の名前が縦に並んでいた。
椅子の下から、呼名女の声が聞こえる。
『席を壊した場合』
ぎい。
椅子が三人の方を向く。
『三名様で、一つのお席をお使いいただきます』
校舎中のスピーカーから、古い町内放送のチャイムが流れた。
きん。
こん。
かん。
こん。
未来の澪が窓ガラスの中で笑う。
『これで三人一緒だね』
その隣に、もう一人の幽霊が現れた。
血に濡れた篠崎。
さらにその隣。
首に黒い糸を巻かれた、透真自身。
三人の未来の幽霊が、ガラスの向こうからこちらを見ている。
『明日の午前零時十三分』
三人が同時に口を開いた。
『全員、死ぬよ』
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
死者が数えていたものは、単純な死亡者数ではありませんでした。
それは、誰にも届けられなかった最後の言葉と、その声を座らせるための席。
透真は自分の席を壊しましたが、その結果、澪と篠崎まで同じ席へ結びつけられてしまいます。
第8話「生きている幽霊」では、三人が旧町内放送局へ向かいます。
そこで透真は、自分たち三人の未来の幽霊を会話させ、誰が最初に死ぬのかを探ろうとします。
しかし、未来の死者たちはそれぞれ異なる死因を語り始めます。




