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全前世でモブだった俺、今世も英雄の後ろで暗躍します

作者:まーサンタ
最新エピソード掲載日:2026/09/04
少年には、誰にも言えない秘密がある。

――自分が生きた、全ての前世を覚えている。

掘削が得意な奴隷、大賢者の弟子、剣聖の孫娘、漁師、狩人、商人、農民、鍛冶職人、薬師……。

数え切れないほどの人生を生きてきた。

しかし、そのどの人生でも、少年は歴史に名を残さなかった。

いつだって英雄の隣にいる、名もなき人間。

そして今世。

少年――ユウ・タナカは十五歳になった。

「今度こそ、普通に生きよう」

英雄にもならない。世界も救わない。

働いて、食べて、眠る。

どこにでもいる普通の少年として生きる。

……そのはずだった。

宿屋で働けば勇者一行が泊まりに来る。

港町で漁師を手伝えば、勇者たちが船を探しに来る。

武器屋で働けば、魔王討伐を目前にした勇者が現れる。

鉱山で働けば、魔王軍の秘密基地を探す勇者たちと鉢合わせる。

「……お前、またいるな?」

「偶然ですよ」

「絶対に偶然じゃないだろ!」

ユウ自身にも分からない。

本当に偶然なのか。

それとも、前世の記憶が無意識に英雄たちを導いているのか。

ただ一つ確かなのは、ユウは英雄たちの前には立たないということ。

その代わり――

壊れた武器を直し、食料を用意し、危険を見抜き、魔物の習性を教え、敵の補給路を断つ。

誰にも知られない場所から、英雄たちを支えていく。

「助かった! 君がいなかったら危なかった!」

「いや、俺はバイトしてただけなんで」

歴史に名を残すのは、いつだって英雄たち。

けれど、英雄が英雄になれた理由を辿れば、必ずどこかにユウがいる。

これは、全ての前世でモブだった少年が、今世でもモブのまま世界を救ってしまう物語。

そして最後にユウは気づく。

英雄の後ろで誰かを支えることも――

確かに、自分が選んだ一つの人生だったのだと。
モブバイト編
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