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俺が出会った令嬢は、笑うことを忘れていた

作者:3色あんこ
最終エピソード掲載日:2026/10/12
「私より上に立つな」

王立カルディア学園の留学生、フォーマ・バイエンスの耳に入った声の主は、この国ブライト王国の王太子、マルケール・オールブライトだった。彼は婚約者である公爵令嬢エカテリーナ・フルーネフェルトに、小声でそう告げていた。

セラドンの髪にアイスブルーの瞳を持つ、美しく気品あふれる公爵令嬢。誰もが王太子妃にふさわしいと認める彼女だが、その学年順位は意外にも中ほどに留まっていた。

しかし、魔法の授業で彼女と組んだフォーマは、その実力が並外れたものであることに気づく。

なぜ、これほど優秀な彼女が実力を隠しているのか。

疑問を抱いたフォーマが理由を尋ねると、エカテリーナは微笑みながら答えた。

「殿下のお心を乱すようなことをしてはいけませんでしょう?」

婚約者の顔を立てるため、自らの成績も魔法の実力も意図的に抑えているというのだ。

その言葉の裏に隠された深い疲労を感じ取ったフォーマは、彼女を放っておけなくなる。

帝国から一人の学生として留学してきた少年と、自分を押し殺すことが当たり前になってしまった公爵令嬢。

「君の話を聞いてみたい」

王太子の婚約者という肩書きではなく、一人の少女としてエカテリーナと向き合うフォーマ。彼との交流は、彼女の閉ざされた世界に少しずつ変化をもたらしていく。

これは、自分の価値さえ忘れかけていた公爵令嬢と、彼女の本当の輝きを見つけた留学生の物語。
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