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俺が出会った令嬢は、笑うことを忘れていた  作者: 3色あんこ


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18/24

第18話 あなたと迎える卒業式



 卒業パーティまで、あと2ヶ月半。

 あの日から一週間。

 エカテリーナは、何度も何度も言葉を練習した。

 そしてようやく。


「フォーマ様」

「ん?」


 放課後の教室。

 窓から差し込む夕日を背に、フォーマが振り返る。


「少し……お話をしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん」


 いつもの穏やかな笑顔。

 それを見ただけで、エカテリーナの心臓が跳ねる。


「あの……」


 両手を胸の前で握る。


「卒業パーティの……エスコートなのですが」

「……!」


 フォーマの瞳が僅かに見開かれた。

 エカテリーナはそれだけで緊張してしまう。


「その……もし、フォーマ様にご予定がなければ……」


 一度、息を吸う。


「私のエスコートを、お願いできないでしょうか?」

「……」


 沈黙。

 エカテリーナは不安になった。


「も、もちろん……ご予定があるのでしたら──」

「いや」


 フォーマが微笑む。


「喜んで」

「……!」


 エカテリーナの顔が、一瞬で赤くなる。


「ほ、本当ですか?」

「うん」

「……ありがとうございます!」


 花が咲いたような笑顔。

 フォーマはそんな彼女を見て少しだけ目を細めた。


「こちらこそ」

「え?」

「俺も、君をエスコートしたいと思っていたから」

「……っ」


 エカテリーナは真っ赤になった。


「そ、そう……ですか……」

「うん」

「……」

「……」


 二人の間に、何とも言えない沈黙が流れる。

 けれど不思議と嫌ではなかった。


「……では」


 エカテリーナが小さく笑う。


「卒業パーティの日を……楽しみにしております」

「俺も楽しみにしてるよ」



◇


 その数日後。

 フルーネフェルト公爵邸。


「まあ!」


 温室でのお茶会でニコルが声をあげる。

 お茶会にはシシリア、ナナリー、マリアンヌ、エレノア。

 合わせて6人の令嬢が集まっていた。


「ついに!」

「本当にエスコートをお願いできたのですね!」

「おめでとうございます!」

「あ……ありがとうございます」


 エカテリーナは恥ずかしそうに微笑む。


「よかったですわねぇ」


 ニコルが嬉しそうに笑う。


「これで卒業パーティは安心ですわ」

「はい」


 エカテリーナは頷いた。


「そういえば」


 シシリアが思い出したように尋ねる。


「フォーマ様は、どのような礼装を?」

「紺色に水色のアクセントが入った礼装だそうです」

「まあ」


 エカテリーナが少し嬉しそうに続ける。


「フォーマ様の故郷の独自の刺繍が施されているそうで……光の角度によって模様が浮かび上がる、と」

「素敵……!」


 ナナリーが目を輝かせる。


「ならば!」


 マリアンヌが立ち上がった。


「エカテリーナ様のドレスにも、水色の装飾を増やしましょう!」

「え?」

「お揃いにするのです!」

「まあ、それは素敵ですわ!」


 エレノアも賛成する。

 ニコルとシシリア、ナナリーも頷いた。


「では、マダム・モーリーに相談してみましょう」

「ええ!」



◇


 翌日。

 エカテリーナはマダム・モーリーの店を訪れていた。


「水色の装飾を、もう少し増やしたいのです」

「もちろん可能ですわ」


 マダムはドレスの設計図を確認する。


「エスコートのお相手様が水色を?」

「はい」

「まあ……」


 マダムが楽しそうに笑った。


「それは素敵ですわね」

「……」


 エカテリーナは少し恥ずかしそうに頷く。


「せっかくですから、並んだ時にお互いの衣装が引き立つようにいたしましょう」

「お願いします」

「お任せくださいませ」


 マダムはすぐに作業へ取りかかった。


「卒業パーティまでには十分間に合いますわ」

「ありがとうございます」


 エカテリーナはほっと息を吐く。

 そしてふと、店の奥に掛けられている自分のドレスを見た。

 藤色の生地。

 繊細な刺繍。

 そしてそこに追加されるであろう水色の装飾。


「……」


 その隣に水色のアクセントを持つフォーマの礼装が並んだら。

 きっととても綺麗だろう。


「……楽しみ」


 小さく呟く。

 マダムはそれを聞いて微笑ましそうに目を細めた。



◇


 そして卒業パーティまで、あと2ヶ月半。

 完成したドレスを受け取る日には、フォーマも同行することになっていた。


「せっかくだから、一緒に見に行こう」


 そう言ったのはフォーマだった。


「……はい!」


 エカテリーナは嬉しそうに頷いた。

 自分の卒業を彩るドレス。

 そしてそのドレスを着て隣に立つ人。

 それを思うだけでエカテリーナの胸は、温かくなった。

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