名前をつけた黒猫の影は、私が怖がるほど大きくなった。何も言えなかった私が、最後に選んだ話
最新エピソード掲載日:2026/11/03
半額のシールを剥がす手もとだけを映す、深夜の無言配信「半額ナイト」。同接は六。
高校生のミラは、一言もしゃべらない。毎晩届く『こんばんは』にも、四百十二回、返事をしたことがない。言わなければ、何も壊れないから。
「お前についてきてんだから、お前が決めろ」
隣の席のニルに押しつけられて、ミラは影の黒猫に名前をつけた。クロ。
それが、自分で選んだ最初のひとつだった。
けれど、ミラが怖がるたびにクロは大きくなり、まわりで人が消えていく。消したのが誰なのかを、ミラは知っている。
言うか、黙るか。一つ選ぶたびに、次の一つが重くなる。山の家へ、海の島へと逃げた先で、少し遅れて鳴る二つ目の心臓の奥から、三千年、数を数えていた船頭の娘レイが、ミラの身体で目を覚ます。
「借りたものは、返す」
レイは、持ち主の代わりには選ばない。伏せた写真立ても、届いた包みも、『こんばんは』の返事も、あの子のものだから。
そのかわり、自分の分は自分で選ぶ。友だちの前に立つことも、ミラの名前で交流戦に出ることも、海の底まで迎えに行くことも。
そう決めていたのに、返す日が近づくほど、この身体で生きていたくなる。
返すか、残るか。
黙ることで何もかも守ろうとした少女と、三千年ぶりに朝を迎えた少女。
一つの身体を分け合った二人が、それぞれ自分で選んで、最後に五文字を打つまでの物語。
高校生のミラは、一言もしゃべらない。毎晩届く『こんばんは』にも、四百十二回、返事をしたことがない。言わなければ、何も壊れないから。
「お前についてきてんだから、お前が決めろ」
隣の席のニルに押しつけられて、ミラは影の黒猫に名前をつけた。クロ。
それが、自分で選んだ最初のひとつだった。
けれど、ミラが怖がるたびにクロは大きくなり、まわりで人が消えていく。消したのが誰なのかを、ミラは知っている。
言うか、黙るか。一つ選ぶたびに、次の一つが重くなる。山の家へ、海の島へと逃げた先で、少し遅れて鳴る二つ目の心臓の奥から、三千年、数を数えていた船頭の娘レイが、ミラの身体で目を覚ます。
「借りたものは、返す」
レイは、持ち主の代わりには選ばない。伏せた写真立ても、届いた包みも、『こんばんは』の返事も、あの子のものだから。
そのかわり、自分の分は自分で選ぶ。友だちの前に立つことも、ミラの名前で交流戦に出ることも、海の底まで迎えに行くことも。
そう決めていたのに、返す日が近づくほど、この身体で生きていたくなる。
返すか、残るか。
黙ることで何もかも守ろうとした少女と、三千年ぶりに朝を迎えた少女。
一つの身体を分け合った二人が、それぞれ自分で選んで、最後に五文字を打つまでの物語。
第1章 半額ナイト
第1章 半額
2026/10/27 13:41
(改)
第2章 観測を続けてください
2026/10/27 13:44
(改)
第3章 つまようじ
2026/10/27 13:46
(改)
第4章 土
2026/10/27 21:00
(改)
第5章 消えた
2026/10/27 21:00
(改)
第6章 港
2026/10/27 21:00
第7章 火薬
2026/10/28 07:00
第8章 消毒液
2026/10/28 12:00
第9章 止まる水
2026/10/28 21:00
第10章 集まる
2026/10/29 07:00
第11章 皿
2026/10/29 12:00
第12章 出張
2026/10/29 21:00
第13章 扉
2026/10/30 07:00
第14章 アイス
2026/10/30 12:00
第15章 赤い丸
2026/10/30 21:00
第16章 今夜は
2026/10/31 07:00
第17章 境界
2026/10/31 12:00
第2章 境界の家
第18章 失敗した方
2026/10/31 21:00
第19章 ノート
2026/11/01 07:00
第20章 有志
2026/11/01 12:00
第21章 三つ目
2026/11/01 21:00
第22章 白い部屋
2026/11/02 07:00
第23章 管理局
2026/11/02 12:00
第24章 見張り
2026/11/03 07:00