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旦那様の足に合う靴は、もうどこにもございません

作者:柊木ましろ
最終エピソード掲載日:2026/08/15
 旦那様の靴の踵が、左だけ減っておりました。うちの階段では、そんな減り方はいたしません。

 十年、この家の男たちの靴は全部わたくしが作ってまいりました。ですから離縁状に署名した日、木型をすべて持って出ました。木型は、彫った職人のものですので。

 辺境で工房を開いたわたくしのもとに、十年まともに歩けていない辺境伯さまがいらっしゃいます。——その頃、王都では。合う靴が一足もなくなった旦那様が、儀典の列で膝を折られたそうでございます。

 責めてはおりません。ただ、お返しできないだけです。

 ハッピーエンド保証です。
 声を荒らげない静かなスカッとと、足の話でしか気持ちを言えない不器用な恋がお好きな方へ。
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