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神様の備忘録

作者:伊丹 宝
最新エピソード掲載日:2026/07/18
世界の片隅に、ひっそりと存在する小さな相談室がある。そこには「神様」と呼ばれる一人の男――尊がいた。

尊は、人生に迷い、傷つき、それでも生きてきた人々の“最後の話し相手”として、相談を受け続けている。訪れる相談者は、王国の修道女、魔女と呼ばれた女性、少年兵、時計職人、神官、医師、芸人…時代も世界も異なる者たちばかり。彼らは皆、誰にも言えなかった過去と、心に抱えた後悔を語る。尊はそれをただ否定せず、裁かず、静かに受け止めていく。

しかし、相談者たちの人生を聞くうちに、尊自身にも“失われた記憶の断片”が少しずつ戻り始める。止まったままの時計、名前のない1冊の本……そして、誰かの祈りの声。

それらは偶然ではなく、すべてが一本の見えない糸でつながっていた。やがて明かされるのは、尊自身がかつて「神になりたくなかった神」であり、それでも世界のために“最後の一柱”として存在を引き受けたという真実だった。

彼は神でありながら、誰よりも人間を信じていた。だからこそ、誰かを犠牲にして神が生まれる世界を終わらせるために、密かに「また一柱、逃さない」と願い続けていた。だがその願いは、やがて彼自身へと還ってくる。

相談者たちは知らぬ間に、尊の失われた人生の断片であり、尊自身の過去を思い出させる“鍵”でもあったのだ。そして最後に明かされる。この相談室こそが、「人を救う場所」であると同時に、「神であることを忘れた神が、自分を取り戻すための場所」だったということ。

これは、誰かの人生を救う物語でありながら、同時に“神様自身が救われていく物語”である。
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