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婚約破棄されたので、王宮のお仕事はお返しします。引き継ぎは完璧ですが、私の人生までお任せするつもりはありません!

作者:ころもぐら
最新エピソード掲載日:2026/11/04
「セシル。君との婚約は、今日限りで解消する」

王太子の婚約者として七年間、王宮を支えてきた伯爵令嬢セシル・アーデンは、突然の婚約破棄を告げられた。

王太子には新たに愛する女性ができたという。

悲しくないわけではない。けれど、もう自分を必要としない人のために働き続けるつもりもなかった。

「承知いたしました。それでは、王宮のお仕事もすべてお返しいたします」

王太子は笑った。

「構わない。君がいなくとも王宮は回る」

セシルも、そう願っている。

だからこそ十四日間をかけて、これまでの業務記録を整理し、後任者に仕事を教え、責任の所在まで明確にすることにした。

ただ、引き継ぎ資料が三十二冊にもなっただけで。

王宮の人々はそこで初めて、彼女がどれほど多くの仕事を支えていたのか知ることになる。

一方、無事に仕事を返却したセシルは、隣国の公益財団の採用試験を受け、新しい人生を歩み始める。

そこで再会したのは、王宮での引き継ぎを見守っていた外交文官ルシアンだった。

仕事に厳しく、少し意地悪で、決して甘い言葉ばかりをくれるわけではない男性。

けれど彼は、セシルが仕事で失敗しても、失敗したことだけで彼女の価値を決めようとはしなかった。

「あなたは、もっと自分のために時間を使ってもいいんですよ」

そんなふうに言われたのは、生まれて初めてだった。

婚約破棄から始まる新しい仕事。少しずつ変わっていく人間関係。そして、不器用な二人の恋。

これは、誰かのために生きてきた令嬢が、ようやく自分の幸せを選ぶ物語。

なお、王宮のお仕事はすべて返却済みですので、今さら戻ってほしいと言われてもお断りします。
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