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神影の暦術師

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/09/07
王国測量院の一等測量士ホーコンは、北部のエッダ石油ポンプ場に関する原簿から、十二年前の十三日間だけが人為的に消されていることを発見する。暦法院長ヴァレンシーアへ報告した直後、記録改竄の罪を着せられ、資格と王都居住権を奪われてエッダへ追放された。

無人のはずの施設で出会ったのは、十二年間たった一人で黒い油を地下へ戻し続けてきた管理人ルグエと、過去の日付を現在へ重ねる巨大な「万年カレンダー」。ホーコンが十二年前を開くと、失われた給水塔や水路とともに、事故当時の魔導機関技師クリストエインが召喚される。しかし彼女は夜明けとともに消え、翌日には前日の記憶を失っていた。

「明日もまた会えるかな?」

その問いに応えるため、ホーコンは彼女の記録を残し続ける。

やがて難民を率いるアズ、交易監督官ブレント、補給将校ルアヴエルらが集まり、荒廃したポンプ場は百二十人が暮らす拠点へ変わっていく。だが、人や土地を歴史そのものから消す「神の影」は拡大し、北部だけでなく王都へ侵食を始める。

十三日間を削除したヴァレンシーアの真意、黒い油が神の影を封じる封印油だった事実、クリストエインが生死どちらにも確定されない「未閉鎖記録」として過去に残った理由が明らかになる。ホーコンたちは、消えた人々の記録を取り戻し、クリストエインを過去の一日ではなく“現在”へ定着させる方法を探す。

すべてを自分で解決しようとしてきたホーコンも、仲間の判断を信じ、測量・防衛・補給・交渉を分担することを覚えていく。やがて王国暦そのものが崩壊寸前となり、一行は封印油を積んだ列車で王都へ向かう。

過去を都合よく取り戻すのではなく、失われた歴史を正しく記録し、今を生きる者たち自身の手で明日を作るために。
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