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潰れかけの異世界食堂に転生した元冷菜係です。差し押さえまで百日なので、まず食材庫にラベルを貼ります

最終エピソード掲載日:2026/10/20
「書いてあったんです」
「どこに?」
港町のフレンチで十四年、冷たい料理と食料庫を守ってきた冷菜担当・霜村律は、閉店の夜、修理されなかった冷凍庫に閉じ込められて命を落とした。

目を覚ましたのは、異世界の王都の下町、潰れかけの宿「冬至亭」の氷室。
出迎えたのは膝の悪い老女マルゴ。宿には逃げた料理人が残した腐りかけの食料庫と、百日後に迫った金貨三百枚の借金があった。

先入れ先出し、検品、日付の木札、原価率、日次決算、ミザンプラス、「八十六」――。
皿を投げる元宮廷料理人、没落男爵家の花売り娘、片腕の元傭兵、スライム連れの孤児、菓子屋になりたい粉屋の娘、酒を飲まない修道士。
律は厨房で覚えた「当たり前」を一つずつ帳面に書き、ばらばらだった七人を一つの店にしていく。

だが王都の食料を握る白秤商会の出荷票には、この国の誰も使わない「数字と斜線」の日付があった。
その書き方を、律は知っていた。

書いてないことは、なかったことになる。
一度それで負けた女が、記録を「自分を守るため」ではなく「次に皿を受け取る人へ渡す手紙」として書けるようになるまでの、百日と一年の物語。
(全24話・完結済み)
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