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背景の君に、花束を~透明な脚本家と、彼の名前を呼んだ女優~

作者:あふあふ
最終エピソード掲載日:2026/08/06
高校演劇部の幽霊部員・如月透には、誰にも明かしていないもう一つの顔がある。

投稿サイトの高校生脚本部門一位――匿名脚本家「とおる」。

透は三年間、看板女優・橘日向に見つからないよう、自ら背景にいることを選んできた。そんな彼が、日向へ言えなかった感情を預けて書いた脚本『透明な境界線』が、演劇部の全国大会用作品に選ばれる。

しかも、主演は日向だった。
上演を辞退するつもりで部室を訪れた透は、日向が自分の台詞を読み違えるのを耳にする。
彼女は怒って演じている。
けれど、その台詞に込めたのは、返事がないことを知っている人間の声だった。
透は辞退届を破り、上演を止めないことを選ぶ。

翌日、正体を疑われる危険を承知で、匿名の演技指示を送る。透の言葉によって日向の演技は変わるが、彼女は借り物の正解で満足せず、自分の力でその台詞へ辿り着こうとする。

そして演技を終えた日向の視線は、作者ではなく、部室の隅にいた如月透へ向けられる。
さらに、投稿順位二位の脚本家・冬木静が、透の正体を見抜く。
逃げたままでいるのか。
日向のいる部室へ戻るのか。
静に突きつけられた問いを、透は文章では拒絶する。
それでも彼は、自分の足で日向の前へ戻ることを選んだ。
姿は隠したい。
けれど、自分の言葉だけは、彼女に正しく演じてほしい。

匿名の作者が女優の声を直すたび、背景だった彼自身もまた、誰かの景色へ引き出されていく青春演劇ドラマ。
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