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勇者の遺体を回収する仕事

作者:ななほし
最新エピソード掲載日:2026/11/08
勇者が死んだ。

それは、この世界では珍しいことではない。

魔王討伐に失敗した者。
ダンジョンから帰ってこなかった者。
名もなき村を守って命を落とした者。

――そして、誰にも見つけてもらえなかった者。

そんな冒険者たちの遺体を回収し、家族のもとへ届ける仕事。
それが、俺――レインの仕事だった。

勇者になる気もなければ、魔王を倒す気もない。
剣の腕も三流。
魔法は使えない。

ただ、死んだ人間を見つけることだけは得意だった。

ある日、俺は「五十年前に死亡した伝説の勇者」の遺体回収を依頼される。

そんな人間が今さら見つかるはずがない。

そう思っていた。

だが、指定された古い地下迷宮の最深部で、俺は本当にその勇者を発見してしまった。

白骨化した身体。
錆びた鎧。
朽ちた聖剣。

そして――

「遅かったな」

死んでいるはずの勇者が、俺に話しかけてきた。

「……」

「おい。聞こえてるだろ」

「聞こえてます」

「なら早く起こしてくれ」

「いや、死体が喋るなよ」

五十年前に死んだ勇者は、なぜか成仏していなかった。

しかも彼は、自分がなぜ死んだのかを覚えていないという。

さらに奇妙なことに、勇者の遺体を調べれば調べるほど、五十年前の「魔王討伐」に関する記録と矛盾が見つかっていく。

勇者は本当に魔王と戦ったのか。

なぜ遺体は五十年間、誰にも発見されなかったのか。

そして――

なぜ歴代の勇者たちは、全員同じ場所で死んでいるのか。

これは、世界を救う勇者の物語ではない。

勇者が死んだあと、その死体を拾う男の物語だ。
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