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ひろきの人生の寄り道

作者:こうた
最新エピソード掲載日:2026/10/14
三十九歳の会社員、ひろき。

二十七歳で七歳年下のまなみと結婚し、幸せな家庭を築くことを夢見ていた。しかし、十年に及ぶ不妊治療は、二人の心と身体を少しずつすり減らしていった。

高校教師として働くまなみは、何よりも子供を望んでいた。けれど、繰り返される治療、期待と失望、そして自分の身体への焦りに、心は限界を迎えつつあった。子供が欲しい。その願いは変わらない。それなのに、夫に求められる夜の営みが、いつしか愛情ではなく義務のように感じられる。応えられない自分を責めながらも、もう頑張れない自分がいる。そんな葛藤を、まなみは誰にも打ち明けられずにいた。

一方、ひろきもまた、満たされない思いを抱えていた。妻を愛している。それでも、夫婦の間から失われていく温もりと、父親になれないかもしれない現実に、孤独を深めていた。

そんな冬の日、ひろきは九条まさこと出会う。

八年間の不妊治療を経験した三十二歳の彼女もまた、名家の存続を背負い、愛情よりも家の都合が優先される結婚生活に疲れ果てていた。

誰にも理解されなかった苦しみ。似た境遇だからこそ通じ合う心。そして、忘れかけていた異性として求められる喜び。

二人は惹かれ合い、越えてはならない一線を越えてしまう。

雪の降る街で重ねる秘密の逢瀬。家庭に戻れば、それぞれの伴侶と向き合わなければならない。それでも二人は、冬が終わるまでの限られた時間を求め合う。

やがて、まさこに妊娠が判明する。

彼女は夫のもとへ戻り、ひろきもまた、まなみの待つ家へと帰っていく。

そして、まなみは自分自身に問いかける。子供を持つことだけが、夫婦の幸せなのだろうか。母親になれなかった自分に、これからどんな人生が待っているのだろうか。

愛すること、求めること、諦めること。そして、失った夢の先にある新しい幸せ。

これは、満たされない欲望に導かれた一人の男と、子供を望みながら心身ともに疲れ果てた妻、そして家の宿命に縛られた一人の女が、それぞれの人生と向き合う物語。

手に入らなかったものを悔やみながら、それでも人生は続いていく。
第一章 閉ざされた夫婦
名前のない疲労
2026/10/11 08:40
九条家の妻
2026/10/11 13:51
雪の日の約束
2026/10/11 13:53
同じ傷を持つ
2026/10/11 14:22
消えない面影
2026/10/12 06:17
第9話 連絡先
2026/10/13 21:41
第10話 優しい嘘
2026/10/13 21:43
第二章 近づく心、揺らぐ日常
第三章「越えてしまった境界線」
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